Subject  : 外耳道炎

カテゴリー: 健康・医療情報 


 外耳道炎
 外耳道は耳介のところに見える穴から筒状になっていて、その突き当たりに鼓膜があります。外耳道はくの字に曲がっているため鼓膜を見るときは耳介を後ろ上にひっぱらないと見ることができません。
 その構造は外から三分の一は軟骨で出来ていて、これを軟骨部外耳道と呼びます。ここには毛のうや皮脂腺があるため、耳垢もこの部分に溜まるのです。さらにその奥の三分の二は骨で出来ていて、これを骨部外耳道と呼びます。骨の表面に直接皮膚がのっているため、ちょっと触れただけでも非常に痛みを感じる部位なのです。入り口近くの軟骨部外耳道はよくかゆみを感じる部位でもあるのでいじったり、水などがはいったあとこすったりするとそこに炎症が起き、さらに細菌感染が加わると炎症は骨部外耳道に進行して行きます。
 乳幼児ではこの骨部外耳道がまだ完成していませんから、炎症は周囲にひろがりやすく、耳全体が腫れたり、頬の方まで腫れることもあります。お母さんが子供の耳垢を取ろうとして、外耳道を傷つけたり、時には鼓膜を破くことさえあります。耳垢を採るには外耳道を照らす光と除去用の鉗子が必要ですから、年に一、二度耳鼻科でとってもらいましょう。出来るだけ耳はいじらないほうが良いのです。

 耳の痛みを訴える病気には中耳炎がありますが、外耳道炎の時は耳介を引っ張ると痛みが強くなりますから区別できます。外耳道炎の数パーセントはカビによって引き起こされます。それは耳の中を常に湿らせていたり、細菌性の炎症に対して、長いこと点耳薬を使っていると、灰白色や黒色のカビの塊を認めることがあります。こうした場合は必ず医師の治療を受けてください。糖尿病がある高齢者に緑膿菌が感染した場合、時には非常に治りにくい悪性の外耳道炎が起きることがあります。これには糖尿病のコントロールが必要になってきます。

外耳炎には、外耳道の全域にわたるびまん性外耳炎と、耳に小さなおでき(耳せつ)ができる限局性外耳炎があります。
びまん性外耳炎はさまざまな種類の細菌や、まれに真菌によっても起こります。アレルギー、乾癬(かんせん)、湿疹のある人、頭皮に皮膚炎がある人は、特に外耳炎にかかりやすくなります。耳あかを取っていて外耳道を傷つけたり、耳に水が入ったり、ヘアスプレーや毛染め剤などの刺激物が外耳道に入っても、外耳炎になります。

 【症状】
びまん性外耳炎の症状は、かゆみと痛みです。いやなにおいのする白または黄色の耳だれがみられることもあります。外耳道はまったく腫れないことも、わずかに腫れる場合もありますが、重度になると外耳道が腫れて完全にふさがってしまうこともあります。外耳道が腫れていたり、膿(うみ)や分泌物のかすなどで詰まっていると、聴力が低下します。耳を引っぱったり、外耳道の入り口に圧迫を加えると、痛みを感じます。外耳と鼓膜の観察用の器具(耳鏡)で中を見ると、外耳道の皮膚は赤く腫れ、膿や分泌物のかすで汚れています。
耳のおできは激しい痛みを引き起こします。おできが破れて少量の血と膿が耳から流れ出ることがあります。

 【予防と治療】
プール後の外耳炎を防ぐには、水泳の前後に、消毒用アルコールと酢酸を同量ずつ混ぜ合わせた液を耳の中に数滴垂らす方法が有効です。綿棒を使った耳そうじも、やりすぎると耳が本来もっている自浄作用をかえって妨げてしまいます。綿棒で分泌物などのかすが鼓膜の方へ押しやられてたまったり、小さな傷ができてしまい、外耳炎の原因になります。
外耳道の全域にわたるびまん性外耳炎の治療では、原因が何であれ、まず吸引器か脱脂綿で分泌物のかすを外耳道から除去します。外耳道をきれいにしただけで、聴力が正常に戻ることもよくあります。通常は抗生物質の点耳薬が処方され、1日数回ずつ、最大で1週間使用します。腫れを抑えるステロイド薬や、痛みを抑える鎮痛薬入りの点耳薬もあります。外耳炎の治療にはしばしば酢酸入りの点耳薬が使われますが、これは外耳道が正常な酸性度を取り戻せば、細菌がさらに繁殖し続けることはないためです。外耳道がひどく腫れている場合は小さなガーゼを丸めて挿入し、そこに点耳薬を浸透させます。
炎症が治まりはじめるまでの1〜2昼夜は、アセトアミノフェンやコデインなどの鎮痛薬を痛みの軽減に用います。感染が外耳道を越えて広がった場合(蜂巣炎(細菌による皮膚感染症: 蜂巣炎を参照))には、抗生物質の内服薬で治療します。
 ⇒ 耳の異常と病気

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