Subject  : 尿失禁

カテゴリー: 健康・医療情報 


 尿失禁
尿失禁とは、尿が漏れるのをコントロールできない状態です。
尿失禁の状態は年齢によって多少異なります。若い成人の場合は突然始まる傾向があり、ほとんど治療しなくてもすぐに治まります。また失禁した場合もたいていは、わずかに尿を漏らす程度で抑えることができます。高齢者の場合は頻繁に起こるようになることが多く、程度も激しくなります。また、高齢者での失禁はすぐには治まらず、治療しないと治りません。
尿失禁は、短期間のうちに突然始まる急性の尿失禁と、ゆっくりと徐々に起こる慢性または持続性の尿失禁に分類されます。急性の尿失禁では、膀胱の感染症が最も一般的な原因です。また可逆的な要因、たとえば意識混濁を引き起こす病気(肺炎など重症の感染症)や運動障害を引き起こす状態(足や股関節の骨折など)が原因となって尿失禁が起こることがあります。このほか、カフェインを含む飲料やアルコールの過剰摂取、萎縮性腟炎(いしゅくせいちつえん)や便秘など膀胱や尿道の炎症を引き起こす状態なども原因となります。持続性の尿失禁は、脳卒中など脳の障害、膀胱に出入りする神経に影響を及ぼす病気、尿路下部の問題、精神機能や体の動きを損なう状態などから起こります。
尿失禁は症状のパターンに基づいて、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、溢流(いつりゅう)性尿失禁、機能性尿失禁、混合型尿失禁という5つの基本的な型に分類されます。

 ● 切迫性尿失禁
抑えられない強い尿意が急に起こり、コントロールできずに尿が漏れてしまう状態です。突然強い尿意を覚えることはあっても普通はこれを抑えることができるものですが、切迫性尿失禁の人はトイレまで我慢できず、尿が漏れてしまいます。
脳の障害によって膀胱を抑制する神経系の能力が損なわれます。膀胱が慢性的に過剰に活動する状態(過活動膀胱)は高齢者でよくみられ、突然の強い尿意が起こるだけでなく、昼夜を問わず頻尿になります。

 ● 腹圧性(緊張性)尿失禁
せきやくしゃみをした瞬間や、力んだり重いものを持ち上げるなど、腹圧が急に高まるような動作をしたときに少量の尿が漏れてしまう状態です。腹圧性尿失禁は、若い女性や中年の女性の尿失禁で最も一般的なタイプです。出産、骨盤の手術、尿道や子宮の位置異常などが原因で尿道の括約筋が弱くなるために起こることがあります。閉経後の女性では、エストロゲンの分泌が減少するために、尿の流れを抑える力が低下します。男性では、前立腺の手術で尿道の上部や膀胱頸部が傷ついて腹圧性尿失禁が起こることがあります。 肥満は尿失禁の発生や悪化の原因になります。

 ● 溢流性尿失禁
ある種の詰まりや、膀胱の筋肉の収縮力低下が原因で少量の尿が漏れ出てしまう状態です。尿の流れが妨げられたり膀胱の筋肉が収縮できなくなったりすると、膀胱はいっぱいになって拡張します。そのため膀胱内の圧力が高まり、少量の尿が外に出てしまいます。
尿道の末端や膀胱頸部が狭くなっている小児では、そのために尿の流れが妨げられることがあります。前立腺肥大の男性では、膀胱から尿道に通じる部分が狭くなります。また男女とも、便秘で直腸に便がたまると膀胱頸部や尿道が圧迫されて溢流性尿失禁になることがあります。抗コリン薬やオピオイドなど、脳や脊髄に影響を及ぼしたり神経伝達を妨げたりするさまざまな薬物は、膀胱の収縮を妨げ、溢流性尿失禁を引き起こします。膀胱を麻痺(まひ)させる神経障害(神経因性膀胱)も溢流性尿失禁の原因になります。糖尿病も神経因性膀胱を引き起こすため、溢流性尿失禁になります。

 ● 神経因性膀胱による溢流性尿失禁
脳、脊髄、膀胱を結ぶ神経が損傷を受けたことで、膀胱が正常に機能しなくなった状態です。糖尿病、脳卒中、多発性硬化症などの病気が神経因性膀胱の原因になります。膀胱機能が低下して十分に収縮できなくなる低緊張性膀胱や、膀胱機能が亢進して頻尿や尿漏れが起こる痙性膀胱の状態になります。痙性膀胱は主に脊髄損傷によって起こります。小児の低緊張性膀胱は、主に二分脊椎(骨髄髄膜瘤)が原因で起こります。
低緊張性膀胱では、膀胱は拡張して大きくなっていますが、痛みはありません。膀胱が拡張すると、少量の尿が絶えず漏れる溢流性尿失禁を起こすケースもあります。膀胱の感染を起こしやすくなり、結石ができやすくなります。
痙性膀胱では、自分の意思に関係なく尿が排出され、尿意の程度はさまざまです。膀胱括約筋が閉じているときに膀胱が収縮すると、内圧が高まり、尿が腎臓へ逆流する障害が起こります。

 ● 機能性尿失禁
トイレまで行くことができない、ときには行きたがらないために尿が漏れてしまう状態のことをいいます。最も一般的な原因は、脳卒中や重度の関節炎など体を動かせない状態になった場合や、アルツハイマー病による痴呆など精神機能が損なわれた状態になった場合です。まれに、重いうつ状態や情緒障害が原因でトイレに行かないようになることがあります。これは心因性尿失禁とも呼ばれます。

 ● 混合型尿失禁
複数のタイプの尿失禁が関係しています。たとえば、小児の場合、神経障害と心理的要因の両方が原因で尿失禁になることがあります。男性では、前立腺肥大による溢流性尿失禁と脳卒中による切迫性尿失禁が同時に生じる場合があります。混合型尿失禁の最も一般的なタイプは高齢の女性に生じるもので、多くは切迫性と腹圧性の混合型です。

 【治療】
治療法は尿失禁のタイプと原因によって異なります。大半の人は治療によって完治するか、症状を大幅に軽減することができます。 高齢者で起こる持続性の尿失禁の中で最も一般的なタイプですが、明らかな原因がない場合もよくあります。
膀胱を弛緩させる薬も有用です。この種の薬で最も一般的に使われているのは、オキシブチニンとトルテロジンの2種類です。どちらも1日に1回服用します。これらの薬を使うと、膀胱への刺激や強い尿意を弱めることができますが、口の中が乾燥したり、便秘、胃食道逆流、ときに尿の貯留などの副作用が起こることがあります。
女性の場合はエストロゲンのクリームを腟に塗るか、エストロゲンの錠剤を服用するのが有効です。プソイドエフェドリンなど尿道の括約筋を引き締める薬をエストロゲンと併用します。
 ⇒ 泌尿器系の病気

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