Subject  : ボトリオコッカス(Botryococcus braunii)

カテゴリー : 環境、エネルギー 


 ボトリオコッカス(Botryococcus braunii)
ボトリオコッカスは温帯から熱帯の湖沼に生息する小さな藻類。太陽光が多い水面に浮上するための浮力を得たり、敵から身を守ったりするために、光合成により重油によく似た油をつくり出すという性質があります。その量は多いもので乾燥重量の7割以上、増殖力も高い。 ボツリオコッカス・ブラウニー(学名:Botryococcus braunii )

ボトリオコッカスを用いたバイオ燃料計画には、上記以外にもいろいろと優れた点があります。まず第一が油の発熱量。ボトリオコッカスから取れる油の発熱量は船舶燃料用のC重油に匹敵します。発熱量が高い反面、大気汚染の原因となる窒素分はC 重油の約半分、硫黄分は約190分の1と環境にやさしいのも特徴です。

また、エネルギーの生産効率を示すEPTで見てもきわめて優秀。EPTとは、石油代替燃料の生産に必要な総エネルギーが、どの程度の期間で回収できるかを示すもので、ボトリオコッカスは0.19年。これは住宅用太陽光発電が2.0年、風力発電が0.27年であるのと比較しても、効率が良いのが分かります。 ボトリオコッカスは生息環境として家庭や工場から出る廃水を好むというのも大きな特徴です。これは、廃水に含まれる窒素やリンが栄養となり繁殖力がアップするため。CO2を吸収して重油を作ってくれるだけでなく、人間にとっては厄介もので環境汚染の元凶である廃水も浄化してくれるそうです。 ボトリオコッカスは微生物的単細胞の藻。淡水中で集まってコロニーを作って生息し、そのコロニーの細胞間に大量の油分をため込んでいます。しかも、細胞内だけでなく細胞外にも多くの油を出します。細胞を破壊して油を取り出すのは大変な作業ですが、油を細胞外に出す特性は、バイオ燃料の生産にとって非常に有利と言えます。 石油代替燃料としてボトリオコッカスを活用するプロジェクトが、科学技術振興機構の支援を受け、いよいよ本格的にスタートしました。それを受け筑波大学では昨年4月から、自動車部品メーカー「デンソー」などと協力して、ボトリオコッカスを使った燃料生産プラントの実用化に向けた研究が進められています。 同大学の渡邊信教授(生命環境科学研究科)の試算では、日本の耕作放棄地でボトリオコッカスを栽培すると、1年間に1ヘクタール当たり118トンのバイオディーゼル燃料が生産できるのだそうです。これはトウモロコシの0.2トン、菜種の1.2トン、油ヤシの6トンに比べ格段に多い数字。国内に約30万ヘクタールある耕作放棄地全体では3540万トンになります。 ただ問題はコスト。現状のまま生産ラインに乗せると1リットルの油を作るのに150〜155円かかるため、生産コストをどこまで削減できるかが課題になります。渡邊教授によると「生産工程を改善したり、太陽光の強い地方で栽培したりすることにより生産性を上げて価格を下げることは可能、実用化も夢ではなくなった」とのこと。実験には産業廃水や生活排水を引いて、藻の増殖と水の浄化を兼ねた施設を作ることが考えられているそうです。

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