Subject   : 弾性体の応力とひずみ

カテゴリー  : 学びの館 > 物理、材料 


 弾性体の応力とひずみ
固体の運動は,全体としての並進運動,剛体としての回転,および”ひずみ”に大別されます。 外力を除いたとき元に戻る限度内のひずみを扱うのが弾性体の力学です。 物体に変形を起させる力が加わっている時には,その物体内にも力を生じます。 これを“応力”といいます。 復元力は作用力に等しいので,応力として外力を使うことができます。 金属などの固体に力を加えると,固体は変形します。 この応力によって生じた微少変形が”ひずみ”です。 これは固体内部に応力を生じ,応力とひずみとがつりあうためで,応力とひずみの間にはある関係が成り立ちます。 弾性体は力を加えられると変化します。 そのときの ひずみ と 力 の割合を 弾性率 といいます。 弾性率=力/ひずみ で求められ、4種類ほど在ります。

● ヤング率 (Young率)
ものを引っ張ったときの 伸びと力 の関係から求められる定数です。 伸びの弾性率とか縦弾性率ともいわれる弾性率で材料が弾性的に挙動する場合の 応力Sとひずみaの比であり,定数Eで表わされます。
E=ΔS/Δa
がヤング率です。このEは材料の強さの尺度となります。
単位は応力と同じPa、tf/m2 など。
GPa(ギガパスカル)で表される場合が多いですが、kN/mmで表記 表記される場合もありますが、数値は同じになります。
一方向の引っ張りまたは圧縮応力の方向に対するひずみ量の関係から求める。 応力とひずみが直線関係にない場合はEは傾斜の接線,または2点間を結ぶ線で近似されます。 引張変形の場合を特にヤング率と呼びますが,多くの場合,圧縮の弾性率も同じ値となります。
たとえば、ヤング率が約100GPa(G(ギガ)は109の意味)である銅では、 断面積1mm2、長さ1mのワイヤに10kgのオモリをぶら下げると、0.1%のひずみが生じる、すなわち約1mm伸びることなどを推定することに使う値である。
結晶の原子間距離の変化に対する抵抗というモデルがイメージである。原子間の凝集力が弾性的性質をきめる。したがって応力と変形の機構が同じ種類の材質間では、融点と弾性係数の間にはある程度の相関がある。応力がある大きさ(比例限度)をこえると、結晶の不完全な部分が不可逆的にうごくことによって変形することになるので、応力とひずみの関係はリニア(線形)ではなくなり、応力を取り除いてももとの寸法に戻らなくなる。
金属のヤング率は数10 - 数100GPaである。この値は100%のひずみを生じる応力の値であるが、実際の材料は1%も伸びないものが多いので、ヤング率は引張強さの数百倍の大きさである。
弾性的性質は温度によって変化するので解析時には注意が必要である。変化の近似式は
E = E0 - BT exp(-Tc/T)
ここで E0 は0[K]でのヤング率、B, Tc は材料によって異なる定数である。一例として、1000℃における鋼のヤング率は2/3ぐらいに減少する。
“曲げ剛性”“たわみ剛性”とも呼ばれます。

● 体積弾性率
圧力を掛けたときの 体積の縮みと力 の関係から求められる定数です。

● 剛性率
ものをズラしたときの ズレと力 の関係から求められる定数です。 “ズレ弾性”とも呼ばれます。

● ポアソン比 (Poisson比)
ものを引っ張ったときの 縦の伸びと横の縮み の関係から求められる定数です。
ポアソン比(Poisson's ratio)は、弾性限界内で、例えば引張りを加えた時に荷重方向の伸び(ひずみ%)、と荷重に直角方向の寸法の縮み(ひずみ%)の比をいう。 無次元数の一つ。
ポアソン比=-横ひずみ(%)/ 縦ひずみ(%)である。
ポアソン比の逆数をポアソン数という。
体積が変化しない場合(液体のような場合)ポアソン比が0.5となる。(断面積は直角方向の寸法の2乗で変化するので、伸びの1/2で体積一定である。) 通常の固体は体積が変化するので、(体積弾性率)ポアソン比が0.3ぐらいの材料が多い。

 ⇒ 代表的な材料の機械的物性

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