Subject   : レーザー(LASER)

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 レーザー(LASER)
 レーザー(LASER)はもともと「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」(輻射の誘導放出による光増幅)の略です。
電子が存在できる場所は軌道に限られている。原子は複数の軌道を持つが、原子核に近から離れるに従い、軌道は不安定になる。 このため、電子はできるだけ内側の軌道に居座ろうとする性質がある。 電子が内側の軌道に収まった状態を基底状態という。 原子が外部から、熱、光、放電等のエネルギーをもらうと、電子は外側の軌道にジャンプする。 このジャンプを励起といい、励起した状態を励起状態という。 基底状態に比べて、励起状態はエネルギーが大きい。外部から得たエネルギーを保持した状態だからである。 励起状態は非常に不安定なので、電子はすぐに元に軌道に飛び降りて基底状態に戻る。励起状態は放っておいても、自然に基底状態に戻るのだ。 この過程で、保持していたエネルギーが光として放出される。 これを自然放出という。 自然放出する前の励起状態にある原子に、隣の原子から自然放出光が入射した場合、興味深い現象が起こる。 入射した自然放出光の刺激によって、励起状態にある電子は強制的に基底状態の軌道に戻ってしまうのだ。 このときもやはり、保持していたエネルギーが光として放出される。 これを誘導放出という。

励起状態が基底状態に戻るプロセスは2系統あることになる。 放っておいても、自然に基底状態に戻る。このとき光を自然放出する。 他の原子の自然放出光を受けて、強制的に基底状態に戻る。このとき光を誘導放出する。自然放出光のフォトンが刺激を及ぼし、誘導放出光のフォトンが生成した。 フォトンが2倍に増幅したということになる。 誘導放出光は、自然放出光と同一の波長、同一の位相を持つ。 つまり両者は区別がつかないことになる。 2倍になったフォトンはコヒーレントな光です。 励起状態の原子をフォトンで次々に刺激し、コヒーレントな光を増やしていけば、レーザー光になる。 これがレーザーの基本原理である。

この誘導放出を利用して、レーザー光を生成させようというアイデアが提案されたのは1950年代になってからである。

レーザー光を生成するもとになる物質をレーザー媒質という。レーザー媒質で励起状態にある原子が誘導放出を起こしたとする。 もし、この原子の周囲に励起状態にある他の原子がなかったら、それ以上の誘導放出は起こらない。 つまりフォトンを十分に増幅するためには、大量の励起した原子が必要なのである。
十分な増幅が起こるためには、レーザー媒質中で励起状態にある原子の密度が、基底状態のある原子の密度よりも高い必要がある。 つまり、誘導放出にとって役に立つ原子(励起状態の原子)が多くなくてはならないのだ。 基底状態の原子よりも、励起状態にある原子の密度が高い状態を反転分布という。
レーザー発振の装置では、放電、電子ビーム、光線などの励起源を使ってレーザー媒質の全域に渡って反転分布を起こさせる。 反転分布中で、誘導放出の増幅量が増え、さらにレーザー媒質を挟む共振ミラー間を光が往復するうちにさらに、増幅することになる。 誘導放出光の増幅量が、レーザー媒質内での損失量を超えるとレーザーが発振する。 励起源からのエネルギー供給で反転分布に導くことを、ポンピングという。 工業用のレーザー装置では、レーザー媒質、励起源、共振ミラーは一体となっている。 これをレーザーキャビティという。

レーザーを発振させるためには、レーザー媒質中の原子(または分子)が反転分布の状態である必要がある。 反転分布を起こすためには励起源からのエネルギー供給が必要であり、その手段には放電励起、光励起、電子ビーム励起、化学励起、電流励起、熱励起などの種類がある。
 ⇒ レーザーの種類

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