Subject   : 舌

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 舌(した、医学・解剖学的には「ぜつ」)
脊椎動物の舌は、筋肉でできた突起物である。筋肉を様々に動かすことで、形や位置を自在に変えることができ、食物を飲み込む際、言葉をしゃべる(構音)際などに使われるので、消化器、運動器の働きをもつといえる。その運動は非常に細かく、正確にコントロールすることが可能。また、哺乳類の舌には、味覚を感じる受容器である味蕾(みらい)があり、感覚器でもある。「べろ」とも。

最表層は、重層扁平上皮に覆われるが、舌の下面以外は、舌乳頭と呼ばれる細かい突起が密集しており、細かい凸凹構造になっている。舌乳頭については後述。 舌の内部は、粘膜の直下まで、筋肉がびっしりとつまっており、表面とのせまい隙間(粘膜固有層)は、その筋層をつつむ強靭な結合組織、舌腱膜(ぜつけんまく)になっている。舌内の筋肉の収縮時には、この舌腱膜を足場にして力を出す。 舌の内部全体を満たす舌筋群には、舌の内部だけを走る内舌筋と、舌の外と内部とをつなぐ外舌筋とがある。内舌筋は、上下、左右、前後それぞれの方向に走る筋線維が入り混じり、これらが強調して収縮することにより、舌の形を変えたりすることができる。外舌筋は、舌を外側から支えたり、舌を突き出したり、引っ込めたりする位置の変化に関与している。下顎骨、舌骨などから出ている。 また、舌の表面下には、舌腺などの小唾液腺が散在し、唾液を分泌している。

● 糸状乳頭
舌背の全面を覆い、先の尖った指のような形をしている。機能としては、食物をなめとりやすくしており、また舌の感覚を鋭敏のする感覚装置であるとも考えられている。糸状乳頭のわずかな働きや傾きが、結合組織乳頭の中に豊富に来ている神経によって感受されるものと考えられている。

● 茸状乳頭
茸の様な形状をなし、舌背に広く分布するが、その数は糸状乳頭よりははるかに少なく、白い糸状乳頭の間に所々に赤い丸い頭を見せている。表面の上皮(重層扁平上皮)が角化していない為、下の血液が透けて見える為、赤く見える。茸状乳頭でも、結合組織乳頭が上皮に向かって、いくつかの指状の二次乳頭を出している。胎生後半と乳児期には茸状乳頭の上皮に味蕾が点在するが、成人では茸状乳頭は味蕾がほとんどないのが一般的である。

● 有郭突起
舌背の後部、分界溝の直前に並ぶ大きな乳頭で、その数は7〜12個が一般的である。直径2mm前後の上面の平坦な円丘が深い溝に囲まれており、溝の周囲もまたドーナツ状の丘を成している。有郭乳頭の上皮(重層扁平上皮)は茸状乳頭同様に角化していない。結合組織乳頭の上面から上皮に向かって指状の二次乳頭が多数出ている。結合組織乳頭の中には血管と多数の神経があり、後者の大部分は味蕾に行く。 また、有郭乳頭の濠の底には、漿液腺(一種の小唾液腺)が導管を持って開口している。これはエブネル腺と呼ばれ、この腺の分泌物が濠や味蕾周辺を洗い流す為、味蕾が常に新しい刺激に感受できるようになっている。

 ⇒ 感覚器系

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