Subject   : 抗菌薬投与の薬力学 (PD)

カテゴリー  : 学術情報 > 薬学 


 抗菌薬投与の薬力学 (PD)
薬力学 (PD) とは、作用機序の研究をする学問である。→どれくらいの濃度になれば効果があるのかを含む。

殺菌性とは菌を殺してしまう作用をもつこと、静菌性とは菌を殺してはいないが、分裂して増殖することを抑える。一般に細胞壁に作用するものは殺菌性であることが多く、蛋白合成に作用するものは静菌性である。殺菌性、静菌性はターゲットとなる細菌によって異なる。例えば、βラクタム剤、アンピシリンは腸球菌には静菌的に働く。静菌性でも、細菌を免疫細胞が破壊するのでin vivoでは問題ない。一般に、抗菌薬の選択において殺菌性か静菌性かを気にする必要はない。感染性心内膜炎、好中球減少時の発熱、髄膜炎などが殺菌性の抗菌薬を必須とする数少ない例外である。

■ トレランス
MIC(最小阻止濃度)とはディスク法で測定される増殖しなくなる濃度で静菌能力を示す。MBC(最小殺菌濃度)とはディスク法で測定する99.9%かそれ以上の細菌を24時間以内に殺すことができる濃度であり殺菌能力を示す。 静菌的抗菌薬にせよ、殺菌的抗菌薬にせよ、その効果を充分に発揮するには抗菌薬の濃度が感染部位でMIC以上になっていることが大切である。 MICが小さくても髄液に移行しない抗菌薬、感受性OKは治療には使えない。また、濃度依存性の抗菌薬ならともかく、時間依存性の抗菌薬なら4MIC位の血中濃度を保っていれば、効果は変わらない。

トレランスとはMICとMBCが乖離している状態である。MBCがMICよりも遥かに高くなってしまう状態。感受性検査では感受性ありとなってしまう(MICしか調べないため)。連用で起こりやすい。何故、生じるかというメカニズムは不明であるが、心内膜炎、骨髄炎、髄膜炎で感受性のある抗菌薬を選んだにも拘わらず、治療効果がない場合は考えるべき状態である。

■ イーグル効果
大量のペニシリン投与をおこなうと逆に薬効がおちることがある。MICを遥かにこえる濃度のペニシリン投与は細菌の分裂を止めてしまうため、分裂時に効果が高いペニシリンの薬効はおちてしまうと考えられている。

■ シナジー 効果
所謂、相乗効果のことである。

■ 時間依存と容量依存
容量依存の薬物は抗菌薬の血中濃度を上げれば上げるほど菌を殺す効果は高まる。タイムキリングカーブは濃度が高まるたびにカーブが急になる。時間依存の薬物は一定濃度に達するとタイムキリングカーブが殆ど変化しなくなる。時間依存では一定濃度(大体4MICといわれる)を越える時間がどれだけ長いかにより効果がきまる。用量依存では時間だけでなく、濃度の時間積分で効果が決まる。
タイムキリングカーブとは実験室である菌の量に様々な濃度の抗菌薬をを投与して、それが時間と共にどのように細菌を殺していくかプロットしていく。X軸は時間でY軸は菌の量である。タイムキリングカーブの傾斜が左上から右下に移っていく線が見られた場合、その濃度の抗菌薬は効果があると考えてよい。傾斜が急であればあるほど菌を早く殺していることを意味し、抗菌薬の効果はより高いということになる。

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