Subject   : DNA損傷・複製阻害の場合の細胞周期停止

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 DNA損傷・複製阻害の場合の細胞周期停止
 紫外線・g線照射などによるDNA損傷や,ヒドロキシウレアやアフィディコリンなどによるDNA複製の阻害がある場合,細胞周期は停止する。このような異常はセンサーによって感知され,PI3キナーゼドメインをもつ核のヒトATMやATR などのタンパク質キナーゼの活性化を引き起こす。ATMやATRは,別のタンパク質キナーゼであるChk1やChk2を直接リン酸化してそれらの活性を亢進する。その後のシグナル伝達過程は細胞周期に依存する。

■ G1期の場合
ATMが活性化されるとp53のSer15がATMやChk2でリン酸化され,MDM2 (p53のユビキチン依存性分解に関わるE3)がp53から離れ,p53が安定化する。p53は転写因子なので,p21Clip1の転写を誘起し,p21Clip1を合成する。これがサイクリンE-CDK2を阻害してS期移行を抑制する。DNA損傷がひどい場合,p53は細胞のアポトーシスを誘導する。

■ S期の場合
同様にして発現したp21Clip1がPCNA(DNA複製におけるクランプ)に結合してDNAポリメラーゼd活性化能を抑制し,DNA複製が停止する。また,BRCA1のリン酸化を介した相同組換え修復が惹起される。

■ G2期の場合
ATRやATMがChk1やChk2を活性化する。これらがCdc25CのSer216をリン酸化して,その脱リン酸化活性を阻害する。あるいは,Cdc25を核から排除する。結果として,サイクリンB-Cdc2の活性化ができなくなる。一方,Chk1/2はWee1をリン酸化して活性を亢進し,サイクリンB-Cdc2の活性化が抑制される。また,p53は14-3-3sを誘導し,これがCdc25CのSer216に結合してCdc25Cの核からの排出を誘起し,細胞周期をG2期で停止させる。

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