Subject   : 植物や微生物を用いた抗癌免疫療法

カテゴリー  : 学術情報 > 薬学 


 植物や微生物を用いた抗癌免疫療法
 健常人にスピルリナを服用してもらうとインターフェロンγ(IFNγ)が誘導され易くなります。 IFNγはNK(ナチュラルキラー)、Tリンパ球がIL-12、IL-18というサイトカイン刺激を受けて産生されます。
 IL-12、IL-18は抗原提示細胞が微生物などと出会って最初に産生するサイトカインです。従って、IFNγの由来は抗原提示細胞と言えます。抗原提示細胞はマクロファージ、樹状細胞などを含み、免疫の入り口を守るシステムを構成しています。
 スピルリナはこの根元の免疫機構に作用して強いIFNγ誘導体活性を発揮します。
スピルリナは“らん藻類”の植物。アフリカや中南米の塩水湖に自生している長さ0.2〜0.5mmの螺旋形をしたした藻です。  抗癌有効成分として、β-カロチン、クロロフィル、ゼアキサンチン、硫化多糖類が含まれています。  スピルリナ抽出物である硫化多糖類が悪性黒色腫の肺転移抑制作用を示すことが報告されています。

 一方、BCGの菌体成分が免疫系を活性化して他の異物に対する防御能を高めること(アジュバンと作用)は、古くから知られていました。スピルリナ服用者の白血球を取り出してBCGの成分と混合すると強力なIL-12再生が再現できます。BCGとスピルリナは手分けして違う種類のリンパ球を活性化していることが推定されています。
 従来免疫系とはリンパ球という細胞が蛋白質の一部(ペプチド)を認識して自分と異物を識別する機構と考えられてきました。しかし、スピルリナ、BCGなどの有効成分は蛋白質ではなく、ヒトになくて感染成分に存在する糖、脂質及びそれらの複合体とみなされます。

 最近、これらの微生物成分を特異的に認識するレセプター(Toll-like reseptor)がレパートリーとしてヒト抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞)に備わっていて、成分特異的な抗原提示細胞の活性化を誘導することが明らかになりました。スピルリナもBCGの成分もこのレセプターの仲間を刺激することが示唆されています。
 微生物の助けを借りて免疫系を強め、癌への攻撃態勢を作ることは不可能ではありません。事実、感染症を併発した癌患者で癌の退縮がみられたり、結核患者で癌が少ないことが報告されています。

 アガリスク、マイタケ、サルノコシカケ、BCG、丸山ワクチン、ピシバニール、細菌のDNAなどが癌に有効との知見も提出されています。これらは既存の「リンパ球の免疫系」の理解の範囲では説明できず、非科学的とも思われていましたが、微生物、植物成分の抗癌活性という点から今後の研究が期待されています。

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