Subject   : 細胞運動(繊毛と鞭毛)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 細胞運動(繊毛と鞭毛)
細胞運動には、繊毛打(ciliary movement)と、鞭毛モーター、筋収縮 などがある。

■ 繊毛打(ciliary movement)
 ゾウリムシの体表には繊毛がはえていて、これを使ってゾウリムシは水中を泳ぐ。人でも気管の表面には無数の繊毛があって、規則的に繊毛打を繰り返している。
 繊毛の断面を電子顕微鏡で観察すると、中心に2本、周囲に9本の繊維(軸糸、axoneme)が見える(9+2構造)。周囲の9本はダブレット構造をしている。周囲の9本の軸糸からは2本のダイニ ンアームが時計周り方向に突き出している。その他のタンパク質は、軸糸を束ねたり、繊毛打を望ましい波形にするための機械的リレーシステムのために必要な結合タンパク質である。  それぞれの軸糸は微小管からできている。中心の2本は微小管そのものだが、ダブレット構造をした周辺の9本の軸糸は、原繊維13本のAチュービュールと11本のBチュービュールの2本の微小管が融合している。

■ 鞭毛
 鞭毛の構造は、基本的には繊毛と同じであるが、繊毛よりはるかに長く、細胞全体を動かすのに適している。精子の尾部が典型的な鞭毛である。
この動きは、た微小管とダイニンの相互作用でおこる。繊毛ではダイニンがダブレットのうちのAチュービュールと結合しており、突き出た腕の先端はBチュービュールとATP依存的に結合している。ATPが加水分解されてエネルギーが発生すると、ダイニンはBチュービュール上をマイナスエンド、すなわち基部の方に動いて行く。このために、屈曲がおこるのである。

 細菌の鞭毛は、真核生物の鞭毛とは異なっている。(鞭毛モーター)
 細菌では、細胞膜に埋め込まれた軸受け部内でローターが回転することにより鞭毛が回転して、推進力が生ずる。回転数は毎秒40回転ほどである。
 この回転のエネルギーはATPによってもたらされるものではなく、プ ロトンの濃度勾配を利用してモーターを駆動していることがわかっている。
 真核生物ミトコ ンドリア内膜に存在する呼吸系タンパク質が、細菌では細胞膜に埋め込まれている。これによってプロトンの濃度差を細胞膜内外に作り、プロトンの移動によって鞭毛を回転させている。
 ⇒ 細胞骨格

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