Subject   : 色を認識するしくみ

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 色を認識するしくみ
 人間の眼の錐体細胞は3つの波長領域、青(445 nmに極大)、緑(535 nmに極大)、黄色(570 nmに極大)を感じることが出来る。

 あなたの頭が受ける全ての色は、これらの三つの波長の相対的強度の組み合わせから作られる。黄色、緑、青はあなたの脳が眼から受け取る唯一の"信号"である。感覚の強度は神経インパルスの周波数に比例するということを思い出せ。もし、650 nmのフォトンがあなたの網膜に届くと、あなたの脳は緑と黄色のシグナルの混合物(緑より黄色が多い)を受けるだろう。これは赤として翻訳されるだろう。同様に、475 nmのフォトンは、同じだけの青と緑、そして黄色が少しといった信号を生む。これは一種の青緑色として翻訳される。これらの領域の一つについて信号の数は、光の強度とその周波数での感度に依存する。これは感覚と認知の間の配分的なコントラストを導く。あなたの眼はたった三種類の信号だけを脳に送る。しかし、脳はそれらを組み合わせることで実際のフルカラーのスペクトルを"つくる"。 二人の人間がまったく同じものを見ているわけではない。しかし、その色はどんな物体かを仮定している。大半の人は一次的な色について同意できる同じ感覚をもつ。

 "Scotopic"(暗順応)と"photopic"(明順応)の感覚は異なる。Scotopic感覚のピークは約507 nmで、一方photopic感覚のピークは555 nm付近である。  感覚におけるこうしたシフトは、たぶんレチナールの物理的な変化を反映したものではなく、フィルターによるものだろう。315 nmより短い波長は角膜によって吸収され(傷害を起こすだろうが)、網膜には届かない。レチナールの感覚は時々1000から1050 nmに(弱い感度ではあるが)広がる。 付記:もしあなたの眼がもっと広い波長まで見えるように広がったら"赤外線の霧"を通して物を見るようになる。なぜなら、どこにでもある熱エネルギーを見ることになるから。あなたの眼は、エネルギーの閾値(上限の波長限界)をもっているので、物理的レベルでのフィルタリングがかかる。

 見ることの物理的なプロセスは"レチナール"と呼ばれるピグメントによるフォトンの吸収によって始まる。ピグメントを"光活性"である物質と定義できる。それは可視領域での波長を吸収する(再放出も可能)。その吸収はレチナールの構造に変化を起こす(有機化学の定義では"シス"から"オールトランス"に変わるという。

 この構造の変化は6 psで起こる。それは、酵素(フォスフォジエステラーゼ)を活性化する効果を持つ。この酵素は数100の"サイクリックGMP"を加水分解し、これが視覚神経のナトリウムチャネルに効果を及ぼし、神経インパルスを起こす。(蛋白死のレベルでは、構造は機能を定義する。この形の変化の仕組みは、"鍵と鍵穴"形の近似と同じように、分子生物学の世界では普遍的な情報(伝達)メカニズムである。レチナールがつく蛋白質は、それが感じることの出来る波長領域を決める。ロドプシンについたレチナールは約500 nmに極大吸収をもつ。
ロドプシンは人間の桿体細胞や多くの光活性生物に存在する蛋白質である。

 ⇒ 眼球の内部構造

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