Subject   : 人の目の時間分解能

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 人の目の時間分解能
 人の目の時間分解能は約50ms〜100ms程度であり、この時間よりも短い光の点滅は連続点灯しているように知覚される。 例えば白熱電球の光は商用電源周波数が60Hzの地域の場合は1秒間に120回点滅しているが普通はチラツキを感じない。

光の点滅だけでなく、動画であれば映画のフィルム映像やテレビ映像が本当は静止画をコマ送りしたもの(テレビの場合、1秒間に30コマ送りの静止画の切り替え)であっても連続した動画として見られたり、アニメーションも同様に動画として見ることができる。この現象を仮現運動という。

視覚系のコントラスト感度を空間周波数ごとに調べたものをコントラスト感度関数(Contrast Sensitivity Function; CSF)とよぶ。静止刺激に対するヒトのCSFはバンドパス型であり、6 cpd付近で感度が最大になる。低空間周波数での感度低下は神経的原因に由来する。高空間周波数では60 cpdまで感度をもつ。高空間周波数での感度低下は主として光学的原因に由来する。一般にCSFを測定するのは煩雑であるため、光学的異常の検査目的には簡便な視力検査を行う。おおまかには視力は一定のコントラストのもとで刺激が検出できる最大の空間周波数に相当する。

● 残像
ある色をしばらく見つめた後、その色を視界から消去すると、視覚上にはその補色(赤であればシアン、緑であればマゼンタ、青であればイエロー)が残像として残る。これを補色残像と言う。

一定方向に運動しているものをしばらく見つめた後、突然その運動を停止すると、それまでと反対方向に運動しているかのような印象が残像として残る。これを運動残像と言う。例えば、走っている電車の窓から流れる景色を見たあと電車が止まると、駅が前へ動いていくように感じる。

● 空間周波数チャネル
CSFは単一の機構に由来するのではなく、複数のバンドパス型チャネルによって構成されることが分かっている。各々のチャネルはバンド幅が等しく中心周波数が異なる。チャネルは画像中の空間周波数成分の検出をしているとみなせることから、これらのチャネルを空間周波数チャネルとよぶ。空間周波数は視野ごとに存在すると考えられている。そのため、空間周波数チャネルによる処理は、大局的フーリエ変換のような線型変換ではなく、擬線型な過程とみなせる。

●  時間周波数特性とCFF
視覚系のコントラスト感度を時間周波数ごとに調べたものを時間的CSFとよぶ。低空間周波数では、CSFは低時間周波数で感度が低下するバンドパス型である。高空間周波数では、ローパス型である。刺激をコントラスト反転したときにフリッカーが知覚されなくなる時間周波数を臨界融合周波数(Critical Flicker Frequency; CFF)とよぶ。CFFは一定のコントラストのもとで刺激が検出できる最大の時間周波数に相当する。ヒトのCFFは50 Hz程度とされる。
 ⇒ 眼球の内部構造

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