Subject : 電子顕微鏡
カテゴリー : 学びの館 > 測定・分析
電子顕微鏡
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通常の顕微鏡(光学顕微鏡)では、観察したい対象に光(可視光線)をあてて拡大するのに対し、光の代わりに電子(電子線)をあてて拡大する顕微鏡のこと。電子顕微鏡は、物理学、化学、工学、生物学、医学(診断を含む)などの各分野で広く利用されている。
電子線の持つ波長が可視光線のものよりずっと短いので、理論的には分解能は0.1ナノメートル程度にもなる(透過型電子顕微鏡の場合)。光学顕微鏡では見ることのできない微細な対象を観察(観測)できるのが利点である。現在では、高分解能の電子顕微鏡を用いれば、原子レベルの大きさのものを観察(観測)可能である。
加速電圧が高いほど分解能が高くなる。加速電圧が高いほど入射電子の試料内部へ透過性が高くなる。ただしチャージアップしやすくなる。
加速電圧(kV) |
波長(nm) |
100 |
0.0037 |
500 |
0.0014 |
1000 |
0.00087 |
2000 |
0.0005 |
3000 |
0.00035 |
- ○ 透過型電子顕微鏡(TEM)
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透過型電子顕微鏡で捉えたグラファイト。一つ一つの丸が炭素原子一個分にあたる。透過型電子顕微鏡 (Transmission Electron Microscope; TEM)は観察対象に電子線をあて、それを透過してきた電子を拡大して観察する顕微鏡。対象の構造や構成成分の違いにより、どのくらい電子線を透過させるかが異なるので、場所により透過してきた電子の密度が変わり、これが顕微鏡像となる。電磁コイルを用いて透過電子線を拡大し、電子線により光る蛍光板にあてて観察したり、フィルムやCCDカメラで写真を撮影する。観察対象を透かして観察することになるため、試料をできるだけ薄く切ったり、電子を透過するフィルムの上に塗りつけたりして観察する。
- ○ 走査型電子顕微鏡(SEM)
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走査型電子顕微鏡で捉えた赤血球(左)と血小板(中)と白血球(右)。走査型電子顕微鏡 (Scanning Electron Microscope; SEM)は観察対象に電子線をあて、そこから反射してきた電子(または二次電子)から得られる像を観察する顕微鏡。走査型の名は、対象に電子線を当てる位置を少しずつずらしてスキャン(走査)しながら顕微鏡像が形づくられることから。電子は検出器に集められ、コンピュータを用いて2次元の像が表示される。
対象の表面の形状や凹凸の様子、比較的表面に近い部分の内部構造を観察するのに優れている。観察対象が導電性のないものの場合、電子線をあて続けると表面が帯電してしまい、反射する電子のパターンが乱れるため、観察対象の表面をあらかじめ導電性を持つ物質で薄くコーティングしておくことが行われる。
- ○ 走査型透過電子顕微鏡 (STEM)
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TEMとSEMの特徴を合わせ持つ走査型透過電子顕微鏡 (Scanning Transmission Electron Microscope; STEM)もある。
⇒
顕微鏡(microscope)の種類
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