Subject : 光合成生物の誕生
カテゴリー : 学びの館 > 地学
光合成生物の誕生
-
今から約32億年前に、それまでと異なる、ある特徴を持った生物が誕生します。
それは、光を使用することによってエネルギーを作り出す生物です。今までは生命を傷つける存在だった光をエネルギーとして使い、周りに無尽蔵にある二酸化炭素と反応させることにより硫化水素を使うよりも効率的にエネルギーを得られるようになったのです。
それまでの生命は硫化水素など環境中にある栄養分を分解するだけでしたが、自ら光合成でエネルギーを作り出すことにより、噴出口以外の場所でも生きられるようになりました。
シアノバクテリアと呼ばれる彼らは、光合成を行う細菌です。登場してしばらくは数が少ないままでしたが、しだいに数を増やしていくと、大量の酸素を放出するようになり、地球の環境と周囲の生命に多大な影響を及ぼしていきます。
自分でエネルギーを作り出す仕組みを獲得したことにより、生命はより大きなエネルギーを獲得し、細胞を大型化させることが出来るようになります。
磁気圏ができることにより光合成を行うシアノバクテリアはより安全に,より活発に増殖できるようになったことでしょう。実際,この時期からシアノバクテリアは大繁殖するようになります。
- ■ 酸素による環境汚染
-
シアノバクテリアは、光合成により効率的に大きなエネルギーを得る方法を獲得しましたが、それは一方で生命にとってはリスクのある方法でした。
二酸化炭素を光と反応させることによりその廃棄物として酸素が作られます。酸素は細胞膜や遺伝子を傷つけ生命に害を及ぼす有毒物質だからです。
それまでに現れていた生物は酸素のない環境でしか生きられない嫌気性の生物がほとんどでした。
シアノバクテリアによって作り出された酸素は、最初は海洋中に溶け込んだ鉄を酸化させることにより消費されました。
27〜20億年前の短期間に、海洋中の鉄は酸化鉄となって沈みました。現在鉄鉱層から得られる鉄は、ほとんどがこの時期に作られたものです。
鉄を全て消費すると、次第に海洋中の酸素濃度が上昇してきました。酸素と触れた生命は傷つき死滅します。生物自らが作り出したものにより、それまで過ごしていた環境が激変したのです。
環境が変化したとき、その変化に耐えることができない生物は死滅し、絶滅します。それまでの生物は、酸素という毒に耐性を持ったものはほとんどいませんでした。
酸素は、今でこそ、環境中になくてはならない存在ですが、この頃の生物にとっては、酸素濃度が上昇することは、とんでもない環境破壊でしかありません。
今の人間による環境破壊とは、比べものにならない規模で、最初の生物による環境破壊が行われたのです。
生命史上最大の危機になりました。
⇒
自然淘汰説(natural selection theory)
[メニューへ戻る]
[カテゴリー一覧へ戻る]
[HOMEへ戻る]