Subject   :エジプト新王国

カテゴリー  : 歴史  


 エジプト新王国 
 エジプトの古王国(大ピラミッドが造られた時代)・中王国に次ぐ諸王朝。前1570年頃、ヒクソスに対抗してエジプト人の統一国家を再建したのがテーベのセケネンラー2世で、第17王朝から20王朝までの約500年間を新王国という。

 エジプトが最も栄えた時代で、ツタンカーメン王、ハトシェプスト女王、ラメセス2世など有名な王が多い。新王国は領土拡張に務め、第18王朝第3代のトトメス1世は、シリア・パレスチナに出兵し、ミタンニと戦い、その地を占領し、さらにトトメス3世はメソポタミアにも進出し領土を最大に広げた。 新王国時代の歴代の王の墳墓として築かれたのが「王家の谷」である。アメンホテプ4世の時代の「アマルナ革命」で一時混乱したが、次いで第19王朝のラメセス2世(ラメセス大王)は西アジアに進出し、ヒッタイトの戦い(前1286年、カデシュの戦い)、領土を確保した。この時代には、今に残るカルナック神殿、ルクソール神殿、アブシンベル神殿など巨大な神殿が建造された。

ヒクソスの力が衰えると、テーベにエジプト人による第17王朝が興った。この王朝は対ヒクソス戦争を開始した。BC1565年、イアフメス1世は奇襲によってヒクソス軍を破り、エジプトから駆逐した。これが第18王朝で、エジプトが最も栄えた新王国時代が始まった。この王朝の王達はルクソールの王家の谷に葬られている。イアフメスの子アメンヘテプ1世はカルナック神殿を造営し、孫のトトメス1世はシリアやヌビアのクシュ王国にも勢力を拡げた。

 BC1479年、幼いトトメス3世が即位するが、継母ハトシェプストが共同統治者となり全権を掌握した。彼女は戦争を好まず、平和外交によってエジプトを繁栄させた。  次のトトメス3世は、周辺諸国に遠征してエジプト史上最大の帝国を築いた。特に、カデシュ王率いるカナン連合軍を破ったメギドの戦いが有名である。世界終末戦争が行われるハルマゲドンとはメギドの丘という意味。

 エジプトが戦争に勝利すると、王はアメン神に感謝して多くの寄進を行った。その結果、アメン神官達は大きな勢力を持ち、王位すら左右するようになった。

 このアメン神官の勢力を抑えるためアメンホテプ4世(イクナートン)が立ち上がった。BC1346年、テーベからアマルナに都を移し、唯一神アテンのみを信じる一神教を強要した。アテンは太陽円盤の形で数多くの手を持った姿で描かれている。そしてアメンホテプ4世自身も神として崇拝するよう説いた。

 しかし改革が急だったため神官達の激しい抵抗にあい、次のツタンカーメンの時に首都はテーベに戻った。改革は失敗したが、宗教や権威にとらわれない写実的なアマルナ美術が生み出された。

BC1290年、エジプトで最も有名なラムセス2世(Ramses)が即位した。彼は66年間在位し、90歳で亡くなるまでに111人の息子と69人の娘をもうけた。第1王妃が美人のネフェルタリ(Nefertari)で、アブシンベル小神殿に祭られている。

 ラムセス2世はヒッタイトが勢力を伸ばしてきた北シリアに侵攻した。ヒッタイト王ムワタリはすぐに反撃し、BC1285年にカデシュの戦い(Kadesh)が起こった。エジプト軍は初戦で有力な軍団を撃破されて苦戦するが、ラムセス2世の奮闘によって辛くも勝利を収めた。しかし、兵力の消耗が激しいため兵を引き、その後両国は史上初の平和条約を結んだ。彼はヒッタイト王女を妃に迎えた。

 また、エジプト南部のヌビアも平定した。これを記念して造営されたのがアブ・シンベル神殿である。この神殿はアスワン・ハイ・ダムの建設の際、水没の危機にさらされたが、ユネスコが神殿を移転して危機を救った。これを機に世界遺産の制度ができた。

● トトメス3世
 前15世紀、エジプト新王国の王。西アジアに進出し領土拡大した。

 エジプト新王国第18王朝の王(在位前1490〜36年)。即位したときは幼少であったので、先代の正妃であったハトシェプストが共治王として実権を握った。前1486年頃から単独で政権をとると、北方の脅威となっていたミタンニ王国に対し遠征を開始した。治世42年間に17回のアジア遠征を行ったがその記録はカルナック神殿の壁面に刻まれている。トトメス3世は軍をユーフラテス川まで進め、カッシート(バビロンを支配していた)、ミタンニ、アッシリア、ヒッタイトなどのアジアの諸王朝にエジプトの地位を承認させた。アジアを制圧したトトメス3世は、次いでナイル川上流ヌビア地方のクシュ王国を従え、エジプト史上最大の版図を獲得した。このような征服活動を展開したところから、トトメス3世は「エジプトのナポレオン」と言われる。しかし国王の権力が強くなるに従い、それを支えていたテーベのアメン神(アメン=ラー)の神官との対立が始まり、前14世紀のアメンホテプ4世のアマルナ革命の混乱期を迎える。
  ⇒ 人類の進化
  ⇒ 世界史年表

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