Subject   : 心理学(Psychology)

カテゴリー  : 人文  


 心理学(Psychology)
心理学(Psychology)は、一般に心 と呼ばれるものの様々な働きである心的過程と、それに基づく行動を探求する学問である。

現在の心理学は、科学的経験主義の立場から観察・実験によって探求を推し進めようとする実験心理学と精神に不調を来した人々の理解および援助を指向する臨床心理学に大別される。心を脳という情報処理装置と解釈する認知心理学と進化心理学は実験心理学の、一方、人文科学・哲学からアプローチする人間性心理学は、臨床心理学の中に含まれる代表的な立場である。

心理学と呼ばれる、あるいは関連するとみなされる学問分野は非常に多岐にわたっているが、それは多岐にわたる分野で独立に、ないし相互に影響しあって「心理学」と呼びうる共通のドグマを志向しているためである。これらの学問分野はいずれも認知、行動、知能、感情などを扱っているが、それぞれ独立に機能しているのではなく「心」を構成する要素として不可分であり、これらの一部を研究対象とする学問は心理学の範疇に含まれるとみなされることが多い。
脳を損傷すると精神機能に異変が生じる事から、「脳が感情や思考などの精神現象を生み出す中枢であるとみなし、脳を構成する神経系を調べることで精神現象を解明できる可能性がある」との立場が生まれた。この発想自体は古くはデカルトが心身合一の問題として言及しているが、実験的に調べられるようになったのは19世紀以降である。
19世紀のブローカやウェルニッケらの失語症と脳損傷の関係調査により、ブローカ野やウェルニッケ野などの言語中枢とされる脳部位 (言語野) が推定された。この研究により、言語を扱う精神機能が脳という生理学的土台によって生じることが明らかにされた。脳損傷と精神機能失調との関係調査は20世紀初頭の第一次世界大戦以降、戦争で脳を損傷した患者の治療の過程で大きく進んだ。1960年代からは、CTにより脳血管障害患者の脳を非侵襲的に調べられるようになり、さらに進展した。

生理学と心理学の関係は、物理現象から精神現象が生起するのかという心身問題を常にはらんでおり、哲学上の重大な未解決問題となっている。神経機構の数理的解析は情報工学に影響を与えている。また、心理学が社会的に注目されるようになるにつれ、適切な研究成果に基づかない右脳・左脳論、ゲーム脳など擬似科学が出現した。

医学の分野において、精神疾患患者の治療という応用的な要請から、疾患の原因となる精神の構造の解明を試みる精神病理学が起こった。

脳を一種のコンピュータとみなし、精神機能および脳機能を情報工学的に解析するという立場が現れた。認知心理学では、この立場をとる。
 ⇒ 人文学〔じんぶんがく〕

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]