Subject   : ゾロアスター教(Zoroastrianism)

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 ゾロアスター教(Zoroastrianism)
 預言者ゾロアスターを開祖とする古代ペルシアにおこった宗教。「アベスター」とよばれる聖典には、ゾロアスター自身の言葉を韻文でしるした「ガーサー」とよばれる部分がふくまれている。聖別した火を礼拝の対象としたため、「拝火教」ともよばれる。唯一神アフラ・マズダ(知恵の主)への崇拝と、宇宙全体をみたしている善(アシャ)と悪の対立という二元論が説かれている。

 善はすべてアフラ・マズダによって創造されたとされる。アフラ・マズダの双子の息子のうち、「聖なる魂」あるいは「創造の力」とされるスパンタ・マンユは善を選択し、のちに「善心」「正義」「アフラ・マズダの王国」「敬虔(けいけん)な信仰」「完全さ」「不死」の6神格にわかれてアフラ・マズダをたすけた。これに対し、双子のもう一方であるアンラ・マンユは悪を選択し、「悪の魂(アーリマン)」となってアフラ・マズダたちに敵対した。

 同様に、人間も、善・悪のどちらを選択するかは個々人にまかされていた。死後、魂は「審判者の橋」で審判をうけ、善にしたがう者は天国へいき、悪にしたがうものは地獄におちた。そして、最終的には悪はすべて灼熱の中で消滅していくとされた。

 ゾロアスター教を最初にうけいれたペルシアの王はダレイオス1世だった。ダレイオス1世の碑文には、アフラ・マズダに対する称賛がたくさん書かれている。彼は理性を強調し、悪は世界じゅうにみちていると考えた。  ダレイオス1世の息子クセルクセス1世もまたアフラ・マズダを崇拝した。しかし、クセルクセス1世はゾロアスター教についてくわしくは知らなかったようである。

 セレウコス朝(前312〜前64)とパルティアのアルサケス朝(前250〜226)では、ゾロアスター教とともに外国の神々も崇拝された。ササン朝ペルシア(226〜651)では、ゾロアスター教がペルシアの国教となった。

 ゾロアスター教は、ヤズドとケルマーンの山岳地帯にあるガブルという小さな共同体の中で維持され、今もイランには1万8000人くらいのゾロアスター教徒がいる。また、インドのボンベイ付近には、パールシーとよばれるゾロアスター教徒がたくさんおり、信仰が盛んにおこなわれている。パールシーたちは今もアベスターの祈祷文をとなえ、聖火をともしているが、今日ではハオマは陶酔性のないものを使用している。しかし、中にはマギの教義にしたがって「静寂の塔」に死体をさらしてコンドルにささげる者もいる。


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