Subject   : 占星術

カテゴリー  : 人文 >  


 占星術 
 天界の星の運行から未来を予測すること。後の天文学の起源となった。 太陽系内の太陽・月・惑星・小惑星などの天体の位置や動きなどと人間・社会のあり方を経験的に結びつけて占う科学(占い)。古代バビロニアを発祥とするとされ、ギリシア・インド・アラブ・ヨーロッパで発展した西洋占星術・インド占星術と、中国など東アジアで発展した東洋占星術に大別することができる。

 古来人間は何らかの方法で未来を予知しようとしてきた。そこからさまざまな「占い」が起こってきたが、最も精密な装いをもっていたのが占星術で、科学的な天文学や暦法を生み出したことでも重要であり、単なる「迷信」とは言い切れない深さと広がりをもっている。占星術の基本は、古代人が宇宙を仰ぎ見て、その広大さと不可知な世界に畏敬の念を抱き、天空で太陽や月、星の動きに神秘的な力を認め、それによって現世のあらゆることが動かされていると信じたところになる。そこから、星の運行や天体現象から国家や社会、個人の運命を予知しようとしたのが占星術である。

 占星術は特に、メソポタミア文明のバビロニアなどで発達し、暦法としての太陰暦を生み出しただけでなく、天文学・数学・地理学などをも生み出し、ギリシアやローマにも伝えられた。中世ヨーロッパでもキリスト教世界でも、時に反教会的な悪魔の所行と見られながら、占星術師が天体観測を続けたことが、ルネサンスにつながっていく側面もあった。また、中国でも高度な占星術が発達し、春秋戦国時代には陰陽五行説を発展させ、道教などの民間信仰にもつながっていき、朱子学の宇宙観などにつながっていく。占星術は、現代の日本であふれかえっている12星座占いや、中国占星術などとはまったく違い、真剣な、当時における「最先端科学」として人々の心を捉えていた。

● 西洋占星術の起源
 バビロニアでは、紀元前2千年紀に天の星々と神々を結びつけることが行われ、天の徴が地上の出来事の前兆を示すという考えも生まれた。『エヌーマ・アヌ・エンリル』(Enuma anu enlil, 紀元前1000年頃)はそうした前兆をまとめたものである。ただし、当時前兆と結び付けられていた出来事は、専ら君主や国家に関わる物事ばかりで、その読み取りも星位を描いて占うものではなく、星にこめた象徴的な意味(火星は軍神ネルガルに対応していたから凶兆とするなど)を読み取るものに過ぎなかった。

 バビロニア占星術は紀元前3世紀頃にギリシアに伝わり、個人の運勢を占うホロスコープ占星術に発展した。占星術を指す単語は、古典ギリシア語のアストロロギア(astrologia)に由来する。アストロロギア(astrologia)のアストロ(astro)という接頭辞は古典ギリシア語の astron 星でありastrologiaとは星について考えたことという意味になる。アストロノミア(astronomia、英語のastronomy)天文学とはastrologiaのなかで星の動きなどについての学問であった(nomos は秩序の意味)。ちなみに、astrologistは占星術者である。
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