Subject   : ヘブライ人

カテゴリー  : 人文 >  


 ヘブライ人 
 東地中海岸で活動したセム語族に属する民族。ユダヤ人のこと。

 前1500年頃からシリア・パレスチナ地方で活動しはじめた、セム系の民族。同じセム系のフェニキア人、アラム人らとともに、シュメール人の都市国家を中心としたオリエント世界の中で、より広範な領域を統合する世界帝国の出現の前提となる動きを展開するようになる。その中で、フェニキア人が海上交易、アラム人が陸上交易という経済的側面で統一国家出現の前提を作ったのに対して、ヘブライ人はオリエントで初めて一神教信仰であるユダヤ教をつくりあげるという精神的、文化的な面での統一国家を準備したことが重要である。

 彼らはヘブライ語を話し、民族宗教として一神教であるユダヤ教をつくりあげたが、民族名としては、自らは「イスラエル人」と呼んでおり、それは旧約聖書の中で神から与えられた名称である。ヘブライ人というのは、他民族が彼らをそのように呼んだもので、特にエジプトで奴隷生活を送っている時代にヘブライ人と言われた。そして、後にその一部族であったユダが作ったユダ王国が長く続いた後、新バビロニアに滅ぼされてバビロン捕囚となったころから、ユダヤ人と言われるようになった。

● 旧約聖書でのヘブライ人
 旧約聖書には、ヘブライ人の系統が詳しく述べられている。それによれば、セムの子エベルの子孫のアブラハムがヘブライ人の祖先とされる。その伝承によればメソポタミア東南部のウルからカナーン(パレスチナ)のヘブロンに移住したとされるが、それは事実とは考えられない。

ヘブライ人は北西セム語を話すが、ウルのカルデア人は南東ハム語で言語が違う。カルデア人は後に新バビロニアを建国し、へブライ人のバビロン捕囚を行う民族なので、捕囚からの帰還の記憶がヘブライ人の伝承に混入したのではないかと考えられる。おそらく彼らは、北西メソポタミアで遊牧生活を送りながら、移動を繰り返していたものと思われ、自らはイスラエル人と称していくつかの部族(旧約聖書では12部族)を形成した。さらに伝承によれば彼らは飢饉から逃れるためエジプトに渡り、その地で奴隷としての苦しい境遇に置かれるようになり、エジプト人からヘブライ人と言われるようになったと言うが、エジプト新王国の資料に建築労働に従事した居留者をアピルと言われていることに対応しており、歴史的事実を反映していると考えられる。

 ⇒ 

[メニューへ戻る]  [カテゴリー一覧へ戻る]  [HOMEへ戻る]