Subject   : マニ教

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 マニ教 
 3世紀のササン朝ペルシアでマニが創始した、ゾロアスター教と仏教、キリスト教を折衷した宗教。地中海世界、中国などにも伝えられ、影響を与えた。

 マニ教はゾロアスター教・キリスト教・仏教を折衷し、初めから世界宗教として成立した。そのような新しい宗教が成立した3世紀の世界は、ヘレニズム的な環境が色濃く残っている時代であった。マニ教の直接的な母体となったグノーシス派はプラトンやアリストテレスなどのギリシア哲学の思弁法とユダヤ教の世界観が結びついたものであった。キリスト教も同様な背景をもっており、当時のこの二つの宗教は同等の重みで存在していた。

 ヘレニズム的環境とは、多様な文化が共存し、他の人々の信仰や生活慣習には介入しないという、寛容な環境であり、そのような環境でマニ教のような折衷宗教が現れることは不思議ではない。

 歴史的にはこのような寛容さは普通のことであった。政治的権力の変遷が、民族構成の変化を意味することはきわめて多かったにもかかわらず、異なる民族が共存するのは当然だった。支配者と民衆のあいだで宗教が異なることもしばしばあったが、支配者が自らの宗教を押しつけることはほとんどなかった。

 <出典:山本由美子氏『マニ教とゾロアスター教』1998 世界史リブレット>

● マニ教の教義
 マニ教の教義とその宇宙観は、基本的にはゾロアスター教の二元論をもとにしているが、グノーシス主義(ヘレニズム世界で流行した神秘思想。プラトンやピタゴラスの哲学をもとに「隠された真の知識」を意味するグノーシスを知ることで救済されると説く)の影響を受け、宇宙を霊的な光と物質的な闇の対立とする。そして物質や肉体を嫌悪するという現世否定は仏教の影響と考えられる。さらに壮大な宇宙草創物語が語られ、光と闇の闘争は最終的にイエスが登場して救済されるというキリスト教に結びつく。と言う具合で、とても短文ではまとめきれない教義を展開しているが、要するにゾロアスター教・グノーシス主義・仏教・キリスト教を折衷した宗教。

● マニ教の戒律
 徹底的に現世を否定するマニ教徒は、現世ではどのように生きていけば良いか。それはマニの示す戒律を守ることとされた。マニは「人間には自分のなかの救われるべき本質を自ら救わなければならないという使命がある」として、不殺生・肉食を慎む・酒を控える・性的な禁欲・無所有の五戒を勧めた。具体的には、五感を抑制するため白い衣服を身につけ、一日一食の菜食主義、週一度の断食、一日4〜7回の祈祷、信仰告白、洗礼(水は使わない)などを守った。マニ教最大の祭りはベーマ祭といい、年末(春分の頃)行われるマニの死を記念し手行われる。ベーマとはマニが降臨すると信じられた玉座のこと。信徒は平信徒(聴聞者)と「選ばれた者」(アルダワーン)に分かれ、厳格な信徒集団を作っていた。

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