Subject : 甲状腺がん
カテゴリー: 健康・医療情報 > がん
甲状腺がん
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甲状腺はのど仏の下方にあり、甲状腺ホルモンという日常生活に必要不可欠なホルモンを分泌する臓器です。甲状腺に発生する腫瘍のうち、悪性のものが甲状腺がんです。甲状腺がはれたときは一見してわかりますし、手でふれることもできます。
甲状腺がんの頻度は、全がん症例の1%程度である。性別は女性に多く、男性の約3倍であり、また年齢では、50代、40代、30代の順に多い。
最も多く(75%)、最も予後のよい乳頭がんはリンパ節転移をよく起こし、硬いしこりである。つぎに多い(15%)濾胞がんは肺や骨へ転移しやすく、良性のしこりに似る。カルシトニンをつくる細胞から発生する髄様がんは遺伝性のものがある。以上を分化がんとまとめる。これに対して未分化がんは幸い少ないが(3%)、全身のがんの中、もっとも悪性である。
- 【症状】
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ほとんどの場合に自覚症状はありません。一番多い主訴は、甲状腺のしこりで
す。つまり何の痛みも異物感も感じない。たまたま鏡で見てはれていることをみつけたり、何気なくさわってみてわかったり、人にいわれたり、職場の定期検診でみつけられたり、他の疾患で受診して、その医師に指摘されたといったことを契機にして、甲状腺腫に気づきます。
二番目に多い主訴の頸部リンパ節腫大も症状は自覚されないものである。これは、まずリンパ節転移がさきにみつかって、あとから本来の原発巣が甲状腺とわかるという場合である。
少しずつでも大きくなる傾向にある甲状腺腫と頸部リンパ節の腫大は、専門医に診てもらわなくてはならない。
甲状腺がんの診断には触診が重要である。がんらしい硬さ、不平滑な表面と形、そしてその可動性を診ることによって70〜90%まで診断はつく。さらに次のような検査が行われる。
砂粒状の石灰沈着を映し出す軟部X線写真、しこりの内部構造をうつし出す超音波検査、組織型もわかる穿刺吸引細胞診、がんの周辺への拡がり方をうつすCT検査などである。
血中の腫瘍マーカー測定による甲状腺がんの診断は髄様がんのときにはできる。カルシトニンが上昇する。乳頭がんなどの場合はまだない。ただ血中サイログロブリンはがんに特有ではないが、術後の経過観察で再発を示すマーカーとして役立つ。これらの検査はすべて外来通院でできる。
- 【治療法】
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分化がんの治療はまず手術である。手術は病巣の範囲によって左葉切除術または右葉切除術と甲状腺(亜)全摘出術の二種類となる。さらに頸部リンパ節転移がある場合には、腫大したリンパ節だけを摘出するのではなく、頸部リンパ節全体を切除する頸部郭清術を同時に行う。以上の手術の危険率は頸部郭清術を併せる手術を含めても1%以下である。
全摘出術の手術後は、甲状腺ホルモン剤を一生服用する。これによって甲状腺がなくても、もとの身体と同じ状態を保つことができる。
分化がんは非常におとなしいがんであり、穏やかな経過をたどるが、放置すれば、原発巣はやがて甲状腺外へ発育し、筋層、気管、食道、反回神経(声を出す神経)などへ浸潤するし、転移は反対側の腺葉へ、また同側の頸部リンパ節あるいは反対側の頸部リンパ節へ、さらには血行性に肺や骨へ拡がる。血行転移が起こる以前に手術によって病巣を完全に摘除できたときには、ほとんど治る。進行した症例を含めても、その治療成績は5年生存率90%以上、10年生存率でもほぼ85%である。
肺転移の治療は放射性ヨードの内服による。未分化がんの治療は手術でなく、放射線と抗がん剤による。
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