Subject : マラリア
カテゴリー: 健康・医療情報
マラリア
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マラリアは単細胞の寄生虫であるマラリア原虫による赤血球の感染症で、発熱、脾臓の腫大、貧血などの症状を引き起こします。
マラリアは、感染した雌の蚊が人を刺すことで広がります。
人に感染するのは、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫の4種類です。
熱帯地域では、死に至る病気として恐れられています。3億〜5億人がマラリアに感染し、毎年100万〜200万人が死亡するといわれてます。死亡者の大半は5歳以下の小児です。熱帯地方からの訪問者や熱帯地方を旅行し帰国した人がこの感染症をもちこむこともあります。
マラリアの感染サイクルは、雌の蚊がマラリア感染者の血を吸うことで始まります。蚊はマラリア原虫を含んだ血を体内に取りこみ、原虫は増殖して蚊の唾液腺(だえきせん)に移動します。蚊が別の人を刺すと、唾液と一緒にマラリア原虫がその人の体内に送りこまれます。体内で原虫は肝臓へいき、そこで再び増殖します。それらは平均して1〜3週間で成熟し、肝臓を出て赤血球に侵入します。赤血球の中でさらに増殖し、やがて感染した細胞を破裂させます。
三日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫の場合、肝臓内で休眠状態になり、成熟した原虫を周期的に血流に放出するため、症状が繰り返し襲ってきます。熱帯熱マラリア原虫と四日熱マラリア原虫の場合は、肝臓にとどまることはありませんが、四日熱マラリア原虫の成熟体は、血流に数カ月、場合によっては何年もとどまってから症状を起こすことがあります。
- 【症状と合併症】
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感染した赤血球が破裂して原虫が放出されるときに、突然ふるえがきて悪寒がし、約40℃を超える高熱が出ます。頭痛、節々の痛み、吐き気を伴いますが、熱は通常は数時間で下がり、おびただしい発汗がみられます。発熱はやがて周期的になり、三日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫では48時間ごとに、四日熱マラリア原虫では72時間ごとに出るようになります。熱帯熱マラリア原虫が引き起こす発熱は周期的でないことが多いのですが、48時間ごとに発熱することもあります。旅行先でマラリアに感染した場合、通常は帰国後数カ月以内に症状が現れますが、中には1年以上たってから現れるケースもあります。
病気の進行とともに、脾臓が腫大します。熱帯熱マラリア原虫に感染した人では、血糖値の低下が生じます。マラリア原虫が血液中に多く存在している人で、特にキニーネを治療に使用している場合は、下がり方はひどくなります。
熱帯熱マラリアは熱帯熱マラリア原虫により起こり、マラリアの中でも最も危険なタイプで死に至ることもあります。熱帯熱マラリアでは、感染した赤血球が細い血管の壁に付着して血管を詰まらせ、その結果、脳、肺、腎臓など多くの臓器が障害を受けます。中でも脳性マラリアは非常に危険な合併症で、高熱、頭痛、眠気、せん妄、錯乱、けいれん発作、昏睡(こんすい)を起こします。これは乳児や幼い小児、妊婦に多く、高いリスクの地域を旅行する人にも起こります。熱帯熱マラリアでは、肺に水がたまり、激しい呼吸困難を起こします。障害が多くの臓器に及ぶと、血圧の低下が起こります。
黒水熱は、熱帯熱マラリアにまれに起こる合併症です。大量の赤血球が破裂することによって血中にヘモグロビンが大量に放出され、ヘモグロビンは尿に排泄されるため、尿の色が黒くなります。腎機能が著しく障害され、透析が必要になることもあります。治療にキニーネを使用している場合に多い合併症です。
一方、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫によるマラリアは症状が軽い傾向にありますが、長期にわたって血液中に原虫がとどまり、発熱、悪寒、頭痛、食欲不振、疲労、けん怠感などが続きます。
- 【予防と治療】
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蚊の駆除対策が非常に重要です。家や納屋などには殺虫剤を噴霧し、ドアや窓に網戸を設置し、寝床には殺虫剤のペルメトリンをしみこませた蚊帳を使用し、露出している肌にはDEET製剤(ジエチルトルアミド)を含有している虫よけ剤をつけるなどの対策を講じます。日没後は蚊に刺されないように長袖、長ズボンを着用し、蚊の多い所へ出かけるときは、洋服にペルメトリンをスプレーしてから着るなどの工夫が必要です。
マラリアの予防と治療にはさまざまな薬剤が使用されています。その一方で、薬剤耐性も問題となっており、特に重症になることの多い熱帯熱マラリア原虫によるマラリアでは深刻な問題となっています。治療に使用する薬剤は、感染したマラリア原虫の種類を調べ、その原虫に有効とされているものを選択します。
クロロキンに対して耐性をもっている熱帯熱マラリア原虫がいるところは、メフロキン、ドキシサイクリン、あるいはアトバコンとプログアニルの合剤などを使用して予防します。三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫によるマラリアの治療には、クロロキンを第1選択薬として使用します。ただし、クロロキン耐性の三日熱マラリア原虫に感染した患者が報告されたことがあるごく少数の地域は除きます。
クロロキン耐性がみられる地域では、熱帯熱マラリアはキニーネとドキシサイクリンで治療しますが、合併症がない場合は、キニーネより副作用の少ないアトバコンとプログアニルの合剤を使います。メフロキンも使いますが、副作用がよくみられます。経口で薬を服用できない人は、入院させて慎重な管理の下で静脈内投与する場合もあります。。メフロキンは吐き気、めまい、睡眠障害を起こすことがあり、まれにけいれん発作や精神障害もみられます。ある種の心臓障害がある人も服用できません。キニーネには、頭痛、吐き気、嘔吐、視覚障害、耳鳴りなど、キニーネ中毒と呼ばれる特有の副作用があります。アトバコン‐プログアニルは吐き気、嘔吐、腹痛を起こすことがあり、腎機能が低下した人、妊婦、乳児には使用できません。
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