Subject  : アスペルギルス症

カテゴリー: 健康・医療情報 


 アスペルギルス症
アスペルギルス症は、アスペルギルス属の真菌によって主に肺に起こる感染症です。

アスペルギルスはどこにでもいる真菌で、たい肥の山、通気口、空気中のほこりの中などによくみられます。主にその胞子を吸いこむことでアスペルギルス症が起こります。
アスペルギルス症は、過去に肺の病気によって形成された肺の空洞など、体内の空洞のある部分を侵します。外耳道や副鼻腔に感染症が生じることもあります。副鼻腔や肺では菌糸や血のかたまり、白血球などが絡まって、「アスペルギローマ」と呼ばれる球状のかたまりをつくります。この真菌球は徐々に大きくなって肺組織を破壊していきますが、たいていの場合、他の部位には広がりません。
まれに、病気の勢いが非常に強くなって急速に肺に広がり、血流に乗って脳や腎臓にまで及ぶこともあります。このような急速な広がりは、主に免疫機能が低下している人に生じがちです。
アスペルギルスは感染症を引き起こす以外に、皮膚や粘膜でアレルギー反応を起こすことがあります。

 【症状と診断】
肺にできた真菌球は、症状がなく胸部X線検査でたまたま見つかる程度のこともあれば、せきをするたびに喀血(かっけつ)し、まれに重症の致死的な出血が起こることもあります。急速に進行する肺のアスペルギルス症が生じると、せき、発熱、胸痛、呼吸困難が起こります。
深部組織に感染が及ぶと、病状が重くなります。発熱、悪寒、ショック、せん妄、血のかたまりなどの症状がみられます。腎不全、肝不全による黄疸(おうだん)、呼吸困難なども起こり、急速に死に至ることもあります。
外耳道のアスペルギルス症では、かゆみが生じ、ときには痛くなることもあります。夜の間に耳から滲出液が出て、朝起きたときまくらにしみができていることもあります。副鼻腔のアスペルギルス症では、鼻が詰まり、痛んだり鼻汁が出ることもあります。

症状に加えて、感染部位のX線検査やCT(コンピューター断層撮影)検査は、診断をするための手がかりを与えてくれます。感染組織のサンプルの採取が可能な場合には、それを検査に出して真菌の種類を特定します。

 【治療】
感染が広範囲に及んでいる場合や、患者の状態が悪い場合は、ただちに治療を開始する必要があります。治療にはアムホテリシンB、イトラコナゾール、ボリコナゾールなどの抗真菌薬を使用します。しかし、アスペルギルスの中にはこれらの薬に耐性をもつ種類もあり、その場合には、より新しい抗真菌薬であるカスポファンジンを用いて治療します。

外耳道のアスペルギルス症は、真菌をかき出した後に、抗真菌薬を点耳して治療します。副鼻腔にたまった真菌は、外科的に取り出す必要があります。肺の真菌球も、大きな血管の近くに形成されたものは、血管に侵入して出血を起こすおそれがあるので、手術して摘出します。
 ⇒ 真菌

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]