Subject  : 原発性硬化性胆管炎(指定難病94)

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 原発性硬化性胆管炎(指定難病94)
 食物の消化や吸収に関わる胆汁は、肝臓で1日あたり約1リットル生成されて胆管という管に排泄されます。胆汁は肝臓内の細い胆管を経て、空腹時に胆嚢で濃縮されたのち,食事(食物摂取)による胆嚢収縮によって太い胆管(総胆管)を経て十二指腸内に排泄されます。胆管が障害されると胆汁の流れが悪くなり、 黄疸 が起こることがあります。 原発性 硬化性胆管炎はその胆管が障害されて胆管が狭くなり(胆管狭窄)、胆汁の流れが悪くなるとともに肝臓の働きが悪くなる病気です。肝臓の中・外の比較的太い胆管が障害されるのがPSCの特徴です。英語ではPrimary Sclerosing Cholangitisといい、頭文字をとってPSC(ピー・エス・シー)と呼ばれています。同じく胆管が障害される病気であるPBC同様、血液検査をするとALPやγ-GTPが上昇しますが、特徴的な 自己抗体 は存在せず、血液所見だけで診断することはできません。通常はERCP、MRCPなどの胆管像で、特徴的な胆管変化を捉えて診断します。 また、PSCにはしばしば潰瘍性大腸炎、クローン病などの 炎症性 腸疾患が合併します。ことに若い患者さんに多く、日本のPSC患者さん全体のおよそ40%、若い患者さんでは60%に 炎症 性腸疾患が合併すると報告されています。PSCに合併することが多いのは炎症性腸疾患の中でも潰瘍性大腸炎ですが、潰瘍性大腸炎・クローン病のいずれとも診断がつかない非典型的な大腸炎を合併する場合もあります。

 【原因】
 炎症を起こした大腸の粘膜を通して腸内細菌または細菌の産生する毒素が肝臓へ流入してくるのではないか、また、大腸でリンパ球が異常に活性化され、それが肝臓に流入して胆管を傷害するのではないか、などの仮説も提唱されていますが、まだ解明には至っていません。また、およそ30%の患者さんで 抗核抗体 が検出されることなどから自己免疫の関与も示唆されています。

 【症状】
 PSCは黄疸やかゆみで発症することが多いですが、無症状のまま人間ドックや健診で肝機能検査や腹部エコー検査の異常を指摘され、それをきっかけとして診断される場合もあります。診断された後特に症状はないまま経過する方もおられますが、胆管が狭くなり胆汁の流れが滞ることによって起こる黄疸や皮膚のかゆみ、そこに細菌が感染して起こる胆管炎などの症状を伴うことが一般的です。PSCの病状の進行速度は一定ではありませんが、これらの症状を繰り返しながら肝臓の機能が徐々に低下し、肝硬変へと進行します。その結果、他の原因による肝硬変同様、食道・胃静脈瘤、腹水、黄疸、 肝性脳症 などを伴い、肝不全へと進行して、肝移植を行わない限り救命できない状態になることがあります。また、PSCでは胆管癌を合併することも比較的多いことが知られています。

 【治療法】
 確立した根治的治療法はないため対症療法にとどまるが、病期・病態に応じた対策が必要である。初期から中期では免疫反応による炎症と胆汁うっ滞に対して、胆汁うっ滞が持続すると胆汁うっ滞に基づく症状と合併症に対して、肝硬変に至ると肝硬変に伴う門脈圧亢進症、腹水、脳症等の合併症に対しての治療が必要となる。?ウルソデオキシコール酸(UDCA)は現在第1選択薬とされており、初期から投与される。90%の症例では胆道系酵素の低下がみられるが、進行した症例では効果が期待できない。高脂血症薬の1つであるベザフィブラートにも生化学的改善効果が認められており、我が国ではしばしばUDCAと併用されているが、最近この併用には長期予後の改善効果がないことが報告された。PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎の病態が強い場合には副腎皮質ホルモンが併用される。?症候性PBCでは、胆汁うっ滞に基づく症状、特にそう痒、高脂血症とビタミンDの吸収障害による骨粗鬆症に対する治療が重要である。門脈圧亢進症を来しやすく、胃食道静脈瘤は肝硬変に至る前に出現することがあるので、定期的な観察が必要である。進行例では肝癌の併発にも留意する。肝硬変に進展した場合は、腹水、肝性脳症等の合併症に対する対応が必要となる。

<出典:難病情報センター>
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