Subject  : 巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(指定難病100)

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 巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(指定難病100)
 腸管(消化管)の大事な働きは、口から食べたものを消化・吸収することです。そして消化・吸収するためには食べたものを口から、胃、十二指腸、小腸や大腸まで運んでいかなければなりません。腸には消化・吸収に加えて、食べたものを運ぶ働きがあります。そして最後は吸収しきれずに残ったものを便として体外に排出します。他にも食べ物と一緒に飲み込んだ空気やおなかの中で発生したガスも体外に運び出します。そのような自立的な腸管の動きのことを「蠕動(ぜんどう)」といいます。 「巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症」とは、その蠕動が生まれつき障害されている(蠕動不全)病気です。特にこの病気では腸管以外にも膀胱が大きくのびきっていること、大腸(結腸)が縮んでいることが特徴とされています。 この蠕動がうまく働かないといろいろな困ったことが起きます。 まず食事や空気をうまく肛門側へ送ることができないので、腸閉塞のような症状を来します。おなかが張って(腹部膨満)、嘔吐を繰り返します。それだけではなく、排泄も障害されますので、腸の中で細菌が繁殖し、感染症(腸炎)を起こすことがあります。 その結果、食事がとれない、感染を繰り返す、という非常に危険な状況に陥ります。したがって、この病気の場合は中心静脈栄養といって、点滴による栄養補充が必須となります。また、おなかに入ったものを外に逃がす経路として 腸瘻 (人工肛門)が必要となることが多いようです。

 【原因】
 この病気の原因については、海外からの報告からACTG2、MYH11、LMOD1、MYLK、MYL9といった遺伝子の変異であることがわかっています。遺伝子というのは私たちの体の中で様々な働きをするタンパク質の設計図となるものです。上に挙げた遺伝子は、消化管や膀胱の平滑筋に存在して筋収縮に関与するタンパク質の設計図となるような遺伝子であり、遺伝子の変異によってタンパク質の機能が変わり腸や膀胱の動きが悪くなっているものと考えられています。しかし個々の遺伝子変異がどのようにして病気の発生に関与しているかについての詳細はまだわかっていません。

 【症状】
 生まれてすぐに腸閉塞のような症状がでます。お腹は大きく張り、便もほとんど出ません。ミルクを飲んでも吐いてしまいます。放置すると消化管が破れたり、腸炎を起こしショックになったりするので多くの場合は緊急で手術が必要となります。 その後も、腸閉塞症状と腸炎を繰り返します。また腸が拡張(太くなること)し、捻れてしまい、緊急手術を必要とすることもあります。 多くの場合、中心静脈栄養と腸瘻(人工肛門)が必要となっているため、それらによる合併症、副作用にも注意が必要です。

 【治療法】
 手術による外科的な腸の切除はあまり効果がなく、主に腸管の減圧と栄養療法が重要です。

 根本的な治療法はありません。対症療法といって、個々の症状を緩和するような治療が中心となります。ミルク、食事が十分にとれないため、多くの場合は中心静脈栄養が必要になります。中心静脈栄養とは、心臓の近くまでカテーテルという管をいれて、栄養となる点滴(高カロリー輸液)を行うことです。長期間にわたり必要となるケースが多いので、ほとんどは在宅静脈栄養が行われます。つまり自宅で点滴をしながら、学校へ行ったり就職したりすることになります。 また、腸閉塞に対しては、消化管の内容物を外に出すために腸瘻(人工肛門)を必要とします。腸瘻にはいろいろなタイプがあり、重症度に応じて作る場所も様々です。胃に穴を開ける 胃瘻 、小腸に腸瘻を作る小腸瘻などもあります。またチューブをいれて腸の内容を抜くような穴をつくる、チューブ腸瘻という方法もあります。

<出典:難病情報センター>
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