Subject   : 放射線と放射能

カテゴリー  : 学びの館 > 化学 


 放射線と放射能
地球上の全ての「モノ」は、原子により構成されています。この原子の中には鉄や銅、酸素等様々な種類があります。 これらの原子には、落ち着いた状態の「原子」と、まだ活発な状態の「原子」の2種類があります。放射線とは、このまだ活発な状態の「原子」が落ち着いた状態の「原子」に変わろうとする時に放出するエネルギーのことをいいます。
放射能とは 放射性物質が放射線を放出する能力のことです。
放射性物質の活発な「原子」の数(放射能)は、時間とともに減っていき、 この「原子」の数が半分になるまでの時間を 「半減期」といいます。

■ 放射線と放射能の量を表すのに使われる単位

意味 単位 メモ
放射能の単位 放射能 どれだけ放射線が出ているか Bq ベクレル
放射線に
関する単位
照射線量 人体にどれだけあたっているか C/kg クーロン/キログラム
吸収線量 人体にどれだけ吸収されたか Gy グレイ
(実効)線量当量 人体への影響はどうか Sv シーベルト
4Svで50%致死線量の被曝になります。

 放射線が人体に与える影響
放射線に我々がばく露した場合、放射線が身体を通過しただけでは何も起こりません。放射線が身体を通過する間に、我々の身体を構成している原子の軌道電子にその軌道を飛び出すだけのエネルギーを与える(電離を起こす)ことで初めて放射線影響を起こす最初のきっかけを生じます。 X線、γ線はこのような電離作用を持っているので電離放射線と呼ばれ、人体影響が問題となります。 人は、DNAや細胞のレベルで生まれつきの自己回復能力が働き、少々の損傷は修復され、身体にはほとんど影響が無いのですが、この自己修復の能力を超えたときに、放射線による影響が症状として現れ、ひどい場合は死に至ります。
酵素機能の低下 :大量の放射線を受けると、細胞の働きを助けている酵素の機能は電離作用によって低下します。その結果として細胞の機能も低下します。
細胞分裂の遅れ :大量の放射線を受けると、電離作用の影響によって細胞分裂は一時的に遅れますが、やがて回復します。
遺伝子損傷 :電離作用は遺伝子を傷つけ、線量が多いと細胞の死を招きます。(核の中の遺伝子が細胞を支配しており、核が損傷すると細胞は生存できなくなります)

放射線による人体への影響は、放射線の電離能力に依存します。そのため、電離能力の高い放射線は同じ線量でも影響は大きく現れます。
放射線が人体に与える影響は、身体的影響と遺伝的影響に大別されます。身体的影響とは、放射線を受けた人だけに現れる影響です。遺伝的影響とは、放射線を受けた人の遺伝子を通じて子孫に現れる影響です。
身体的影響は、さらに急性影響と晩発影響に分けられます。急性影響とは、かなりの放射線を受けた場合に数週間以内に症状が現れる影響です。晩発影響とは、白内障やガンのようにもっと長い潜伏期(数年から数十年)の後に症状が現れる影響です。
このような放射線により発生する影響には、確定的影響と確率的影響があります。確定的影響は、受けた放射線量がある量(しきい値)以上の線量を受けた場合に発生する影響です。一方、確率的影響とは、受けた線量により発生確率が増加していく影響であり、ごく微量の放射線量でもそれ相当の影響を受けると考えられる場合をいいます。発がんや遺伝的影響が主な例です。

大量に暴露すると大きな影響のある放射線ですが、実は、人間は皆、年間2.4ミリシーベルトくらいの自然放射線を地面や大気や食物から受けています。自然放射線の量は地域などによってずいぶん異なりますが、地域によって人間の健康や寿命に差は全く見られません。 その他、放射線を利用した医療診断によって、国民ひとりあたり平均で年間2.25ミリシーベルトの人工放射線を受けています。
 ⇒ 放射線の種類と特徴

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