Subject   : 化学結合

カテゴリー  : 学びの館 > 化学 


 化学結合
化学結合は分子や結晶中で原子の間を結び付けている力である。多くの簡単な化合物では価電子理論と酸化数の考え方で分子の構造と構成を説明できる。同様に、古典物理学(電磁気学)の理論で多くのイオン性構造が説明できる。分子同士の相互作用は化学結合ではなく、分子間力と呼ばれる。
複雑な化合物では、例えば金属複合体では価電子理論は破綻し、その振る舞いの多くは量子力学を基本とした理解が必要となる。

化学結合の種類は、 分子(金属)の内部構造を構成する化学結合(分子内結合) と分子間の化学結合に 大きく分けられる。

分子間の化学結合
  • 共有結合(非金属-非金属)
  • 配位結合
  • 金属結合(金属-金属)
  • 分子(原子)集団を構成する化学結合
  • イオン結合(非金属-金属)
  • 水素結合
  • ファンデルワールス結合もしくは狭義の分子間力
分子間に生じる化学結合は、静電相互作用(イオン結合)と分子間力に基づく。イオン性分子は明確な電荷を有する為にその静電相互作用によるイオン結合はおおよそ古典物理で記述可能である。しかし、中性分子(あるいはイオン性分子もその性質を併せもっているが)が持っている双極子モーメントや分極の誘導や配向あるいはロンドン分散力により生じる分子間力によって一定距離では引力が、接近しすぎると斥力が作用する。理想気体には存在せず実在気体に存在する引力をファンデルワールスが提唱したことから気体以外の分子間力もファンデルワールス力と呼ばれることが多く、分子間力に基づく化学結合もファンデルワールス結合(-けつごう、Van-der-Waals Bonding)と呼ぶ場合が多い。
分子間力による一時的な静電相互作用はイオン結合によるものに比べて1/10〜1/1000の強度しかない。しかし高分子や分子クラスターに関与する非イオン性の原子は数が膨大であるから分子間力に基づく化学結合も積み上げられると結合力としてかなりの影響力を持つ。すなわち、分子を繋ぎ止めている分子内結合を別にして、分子間力は物質を構成する分子をひきつける力を提供し物体の形状や特性を表現することになる。

● 分子内結合
分子内結合では、エネルギー的な選り好み(すなわち、低いエネルギーを好む)によって価電子(分子軌道)が選択される。物質を構成する原子の間にある電子密度が局在したり、非局在化したりする要因によって結合の種類は認識される。
共有結合では関与する電子の密度は結合軸周辺に分布して、個々の原子には所属しない。そして、原子に局在することなく分子軌道として知られる現代の共通理論が記述する形状をとった電子密度分布が分子内に横たわっている。 純粋なイオン結合とは違って、共有結合は異方向性の性質を示す。
それに対してイオン結合の場合は、電子は主にそれぞれの原子に所属し、全体的な電荷は物質を構成する個々の原子殻に明確に割り当てられている。原子間に(実際の所はイオン間に)作用する力は、大局的に見ると等方向的に連続した静電ポテンシャルの性質を示す。共有結合の複雑さは重厚な量子力学の考えをして理解される。
また、どっちつかずの状況は存在していて、結合が分極したイオン性と電子が(相互の原子から)非局在化した電子対の性質を混ぜ合わせた様な性質を示すこともある。したがっで電気陰性度の異なる原子間の共有結合には永久分極による静電相互作用による力も合わせて作用するので、その作用の寄与する分をイオン結合性と言い表すこともある。すなわちイオン結合性の共有結合している二つの原子を無限遠まで引き伸ばすとその極限ではイオン結合になるので、共有結合とイオン結合とで二分化されるものでもない。

● 水素結合
水素結合とは分極に基づく分子間力であるが、その結合の要因となる分子構造に特徴があるために分子間力とは別に扱われることが多い。また、水素結合などの極性分子が形成するクラスターは、極性分子と強く結合しない非極性分子をクラスターから排斥する。そして極性分子クラスターが大量に存在する環境では非極性分子を集合させる見かけ上の力が作用しているように見えるので、これを疎水結合と呼び分子間の化学結合とみなす場合もある
 単結合・二重結合・三重結合
1組の原子間の結合に関与する原子価は1価とは限らず、複数の原子価で結合が生成する場合もある。結合の生成に関与し原子価の数、すなわち結合生成に寄与している電子対の数を結合の多重度と言い、多重度に応じて次のように化学結合は呼び表される。
単結合(たんけつごう、single bond)- 多重度が1の結合
飽和結合という。
二重結合(にじゅうけつごう、double bond) - 多重度が2の結合
三重結合(さんじゅうけつごう、triple bond) - 多重度が3の結合
結合の多重度は原子価を元にした概念的な分類であるが、実際の共有結合においては、σ結合とπ結合との組み合わせにより単結合と多重結合(二重結合と三重結合)とが構成される。単結合にはπ結合が関与しないため、単結合と多重結合とでは反応性や物理化学的特性が異なる。 多重結合は不飽和結合と呼ばれる。

● 有機化合物の炭素原子間の結合
結合の名称 σ結合 π結合 軌道 原子間距離〔nm〕
単結合
C−C
1個 0 sp3混成 約0.15
二重結合
C=C
1個 1個 sp2混成 約0.13
三重結合
C≡C
1個 2個 sp混成 約0.12
ベンゼンの
結合
1個 0.5個相当 sp2混成 約0.14
σ結合は,2個の電子軌道の重なり方が大きく,分子軌道が1本の軸の周りに対 称的に分布する結合で,当然結合エネルギーも大きい。π結合は,1つの平面の両 側にそれぞれ電子雲が分布する結合で,2個の電子軌道の重なり方が小さく,σ結 合より結合エネルギーが小さい。単結合はσ結合1個で形成されるが,二重結合・ 三重結合ではこれにπ結合が1個・2個加わって形成される。結合数の多い結合ほ ど結合力が強くなり,原子間距離が小さくなる。しかし,π結合はσ結合より弱い ので,結合エネルギーは単結合の2倍,3倍にはならず,それより小さい値となる。
 ベンゼンC6H6の炭素原子間の結合は,単純な単結合でも二重結合でもない。こ のことは,分子が正六角形であることから証明される。もし,単結合と二重結合が 交互に存在するとすれば,炭素原子間の距離も,長いものと短いものが交互に存 在することになり,歪んだ六角形になるはずである。ベンゼンではπ結合が特定の 原子間に固定されず,炭素原子間では平均して0.5個分のπ結合が存在するとみな すことができる。なお,結合エネルギーは,π結合の0.5個分相当よりは大きくな る。これはベンゼンが共鳴構造をとるためと説明されている。

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