Subject   : 共有結合と結合エネルギー

カテゴリー  : 学びの館 > 化学 


 共有結合
 H2分子が形成されるとき,H原子は電子を1個しかもたない1s電子軌道を互い に重ね合わせて,2個のH原子の間で電子の行き来ができるようになる。このよう にして,2個のH原子はより安定なH2分子をつくる。この際,重ね合わされた元の 電子軌道は消滅し,新しく分子軌道がつくられる。分子軌道は2つの原子を一様に 包み込んで原子どうしを強く結びつける。このように,電子を共有することによっ てできる結合が共有結合である。

 水素分子の解離エネルギーは436kJ/molである。これは 次式のように示される。
  H2(気)=2H(気)−436kJ
 2個のH原子が完全に離れているときのポテンシャルエネルギーを0とすると, この2原子が互いに近寄って共有結合を形成する場合、2つの原子核の間の 距離がr(0.074nm)になったとき,2原子は 最も強く結合して安定になる。この場合,Hの2原子が完全 に離れているときに比べて,D (436kJ/mol)だけエネルギーを放出している ことになる。
 結合エネルギー
分子内の各共有結合に対し,その結合を切断するのに必要なエネルギーを割りあ てたものを,結合エネルギーという。 二原子分子では,その解離熱(原子化熱)から直接結合エネルギーが求められる。 たとえば, H-Hの結合エネルギーは,水素の解離熱から436kJ/molとなる。 多原子分子では,単に全体としての解離熱は求められるが,個々の結合の解離エ ネルギーは場合により異なり,単純には決められない。 そこで,同等の結合をもつ多原子分子では,便宜的に各結合解離エネルギーの平均 をとって,これを結合エネルギーとしている。水分子のO-H結合では,463kJ/mol が結合エネルギーとなる。同様にして,C-H,N-H,S-Hなどの結合エネルギーは, CH4,NH3,H2Sなどの値から求められる。また,多種の結合からなる多原子分子 では,全体の解離熱の値をもとにして,既知の結合エネルギーの値を引いて未知 の結合エネルギーを求める。

● 結合エネルギー D〔kJ/mol〕(25°C )
結合(分子) D
kJ/mol

結合(分子) D
kJ/mol

結合(分子) D
kJ/mol
H-H(H2) 436 C-C(ダイヤモンド) 357 O-O (H2O2) 145
H-F(HF) 568 C-F(CF4) 489 O=O(O2) 498
H-Cl(HCl) 432 C-Cl(CCl4) 327 S-S(S8) 266
H-Br(HBr) 366 C-O(CH4O) 329 F-F(F2) 158
H-I(HI) 298 C=O(CO2) 804 F-Cl(CIF) 255
H- O (H2O) 463 C=O(H2CO) 679 F-Br(BrF) 285
H-S(H2S) 368 C=S(CS2) 578 Cl-Cl(Cl2) 243
H-N(NH3) 391 C-N(CH3NH2) 273 Cl-Br(BrCl) 219
H-P(PH3) 321 N-N(N2H4) 158 Br-Br(Br2) 193
H-C(CH4) 416 N≡N(N2) 945 I-I(I2) 151

● 結合解離エネルギーD〔kJ/mol〕(25 °C )
分子や遊離基中の特定の結合を切るとき必要なエネルギーを表す。
C-C 結合 D
kJ/mol

C-H 結合 D
kJ/mol

*-H 結合 D
kJ/mol
CH3-CH3 368 H-CH3 434 H-OH 499
CH3-C2H5 357 H-CH2 461 H-O 427
CH3-C(CH3)3 344 H-CH 427 H-O2H 376
CH3-C6H5 417 H-C 339 CH3O-H 436
CH3-CHCH2 466 H-C2H5 412 CH3COO-H 442
CH3-CCH 465 H-C(CH3)3 387 (N-H)
CH3-CH2OH 350 H-C6H5 460 H-NH2 432
CH3-COOH 403 H-CHCH2 455 H-NH 388
CH3-COCH3 355 H-CCH 500 H-N 352
CH3-CN 513 H-CHO 360 (S-H)
C2H5-C2H5 346 H-CH2OH 393 H-SH 383
C6H5-C6H5 468 H-COOH 374 H-S 351

C= Oの結合エネルギーは,ケトン類から求めると615kJ/molとなるが,CO2 から求めると804kJ/molとなる。これは,CO2では単なる二重結合だけでなくい くつかの結合が関係して共鳴構造をとるためと考えられる。

 ⇒ 化学結合

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