Subject  : 高齢者における薬のリスク

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 高齢者における薬のリスク
高齢者は複数の病気、特に慢性疾患にかかる可能性が高いことから、若い人より薬を多く服用する傾向があります。加えて、高齢者は若い人の2倍以上も薬の副作用を起こしやすくなっています。副作用を起こすと重症になりやすく、医療機関の受診や入院が必要な事態になりがちです
年齢を重ねるにつれて、体内の水分の量が減少し、代わりに脂肪組織の量が増えてきます。そのため高齢者では、薬を希釈する水分が不足しがちで、水溶性の薬は濃度が濃くなります。そして薬を貯蔵する脂肪組織が比較的多いため、脂溶性の薬は体内に多く蓄積するようになります。また、年齢を重ねるにつれて、腎臓は薬を尿中にうまく排泄できなくなり、肝臓が薬を代謝する能力も衰えます。こうした加齢に伴う変化のため、多くの薬は若い人に比べて高齢者の体内にとどまる時間が長くなり、薬の作用を長びかせ、副作用のリスクを高めます。

高齢者は薬によるさまざまな作用に敏感です。たとえば睡眠補助薬や抗不安薬を使用すると、眠くなりがちで、錯乱を起こしやすくなります。動脈を広げ、心臓の仕事量を減らすことで血圧を下げる薬を使うと、高齢者では若い人に比べて血圧が劇的に下がるようです。
一部の抗うつ薬やジフェンヒドラミン(不眠症の治療に用いられる薬)など、一般的に使用される多くの薬は、抗コリン作用があります。高齢者は特にこの作用を受けやすく、錯乱、眼がかすむ、便秘、口の渇き(口渇)、ふらつき、排尿困難、膀胱の制御喪失などを伴います。抗コリン作用の中には、ふるえや吐き気の軽減といった好ましいものもありますが、多くは望ましいものではありません。
抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン 、 シプロヘプタジン 、 d‐クロルフェニラミン、 ジフェンヒドラミン 、 ヒドロキシジン 、 プロメタジン 、 トリペレナミンなど)は、強力な抗コリン作用がある。抗ヒスタミン薬はアレルギー反応や季節性アレルギーの治療には有用な薬だが、高齢者のウイルス性感染に伴う鼻水などの症状には適さない。抗ヒスタミン薬が必要な場合は、抗コリン作用のない薬(ロラタジンやアステミゾールなど)を選ぶとよい。抗ヒスタミン薬を含まないせき止め薬やかぜ薬は一般に、高齢者にも比較的安全に使用できる。高齢者はジフェンヒドラミンが入った睡眠補助薬の服用は避けた方がよい 。

他にも、高齢者でリスクが高くなる薬は以下のようにたくさんあります。

薬の種類 薬剤名 メモ
鎮痛薬 インドメタシン すべての非ステロイド性抗炎症薬の中で脳に最も影響しやすく、錯乱やめまいを起こすことがある
メペリジン、メペリジン オピオイドの1種で、錯乱をよく引き起こす
ペンタゾシン、ペンタゾシン 他のオピオイドよりも錯乱と幻覚を引き起こしやすい
プロポキシフェン 依存症を起こしやすく、便秘、眠気、錯乱、まれに呼吸抑制などの副作用を起こす
抗うつ薬 アミトリプチリン 、 ドキセピン 強力な抗コリン作用と鎮静作用
抗糖尿病薬 クロルプロパミド 数時間にわたって血糖値を下げ、血液中のナトリウム値も下がることがある
制吐薬 トリメトベンズアミド 腕や脚、その他の身体各部の異常な動きがみられることがある
降圧薬 メチルドパ 心拍数を減少させ、抑うつを悪化させることがある
レセルピン 起立時のめまいや、抑うつ、勃起不全、眠気を引き起こす
抗不整脈薬 ジソピラミド 抗コリン作用が強く、高齢者では心不全の原因となることがある
H2ブロッカー シメチジン 副作用(特に錯乱など)を引き起こすことがある

 ⇒ 薬の相互作用を防ぐには

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