Subject   : 神経伝達物物質

カテゴリー  : 学術情報 


 神経伝達物物質
神経細胞のニューロン間で信号(刺激)をやりとりするために必要な物質は、 神経伝達物質と呼ばれています。
 50種類以上の神経伝達物質が確認されていますが、その働きが比較的 解っているのは20種といわれています。精神活動の面で重視されるのは γ-アミノ酪酸(GABA-ギャバ)、 ドーパミンノルアドレナリンセロトニンなどです。 特にドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンを総称してモノアミン神経伝達物質と言いますが、モノアミン神経伝達物質は、情動に大変大きな働きを起こし、また多数 の脳内の部位に大きな影響を及ぼすことで知られています。
 人間は何らかの刺激を受けると、大脳でまず解析し、その後海馬に送られます。 海馬から「パペッツの回路」と呼ばれる各部位をめぐる流れに乗り、 そこで感情が生まれます。生まれた感情はふたたび大脳に取りこまれ、 長期記憶などになります。
● 精神活動の面で重視される神経伝達物質
分類 メモ 薬との相関
ドーパミン 快感、多幸感。運動調節。 過剰だと幻覚・幻聴・妄想(精神分裂病に似た症状)。 不足するとパーキンソン症状が起こりやすくなる 抗精神分裂病薬は、ドーパミンの働きを弱める
ノルアドレナリン ストレスを受けると、闘争か回避の行動を起こす。 長期間回避不能のストレスにさらされた場合、ノルアドレナリンが減少し、 また小さなストレスでも減少するようになる。ノルアドレナリンの減少を 繰り返すと、受容体の感受性が上昇し、小さな刺激に対しても過敏に 攻撃・逃避反応をするようになる。 過剰だと、躁状態が起こりやすい。 不足すると、意欲の低下が起こりやすい。 三環形および四環形抗うつ剤、SNRIは、ノルアドレナリンの脳内密度を高める
ガンマアミノ酪酸(GABA) 不安、恐怖を押さえる 不足すると、不安、不眠、てんかん発作が起こりやすい。 恐怖症、強迫神経症、不安神経症と関連。 抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬は、ガンマアミノ酪酸の働きを強める
セロトニン 感情の安定。他の神経系の統制。 不足するとうつ病やてんかん発作になりやすい。 過剰だとセロトニン症候群(錯乱・発熱・発汗など)が起こりやすい。 SSRIは、セロトニンの脳内密度を高める。
オピオイド
(脳内麻薬様物質)
長期間回避不能のストレスにさらされると、精神活動や感情が麻痺して、 何も感じなくなり、闘争も回避もしなくなる。 このとき脳に分泌されるのがオピオイドである
神経伝達物質は合成されると、前シナプス終末にあるシナプス小胞に貯蔵される。前シナプス終末に活動電位が到達すると神経伝達物質はシナプス間隙に放出され、後シナプス細胞の細胞膜上にある受容体と結びつくことで後シナプス細胞に脱分極ないし過分極を生じさせる。放出後は速やかに酵素によって不活性化されるか、または前シナプス終末に再吸収され、一部は再びシナプス小胞に貯蔵され再利用される(元のシナプス小胞に戻るのではなく別のシナプス小胞に充填される)

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