Subject   : 免疫グロブリン(IgM)

カテゴリー  : 学術情報 


 免疫グロブリン(Immunoglobulin M)
免疫グロブリン(IgM)は 抗原刺激を受けて最も早く血中に出現する免疫グロブリンであり、主にリンパ節、脾、骨髄、小腸粘膜、気道粘膜で産生される。 ASLO、RA因子、寒冷凝集素などの血液型に対する凝集素、異物(細菌など)の抗原に対する自然抗体などは通常IgMに属する。 本検査は感染症初期の診断、肝疾患の病態把握などに有用である
IgMは、5個のサブユニットから構成された分子量約90万、沈降定数19Sの巨大な免疫グロブリンで、マクログロブリンとも呼ばれる。各サブユニットは、ヒンジ領域を欠いたH鎖(2本のμ鎖)とL鎖(χ、λ鎖)から構成され、CH3、CH4ドメイン間に形成されるS-S結合で互いに結びつき、さらに1本のJ鎖によって5量体構造が構成されている。μ鎖にはμ1、μ2の2つのサブクラスがある。IgMは、B細胞の分化に伴って細胞表面に発現し、B細胞の分化や抗体産生、アポトーシスなどの免疫系に関与する多様な機能をつかさどることが明らかになってきている。抗原刺激によって最初に産生される免疫グロブリンであるIgMは、IgGなどの抗体が作られる時期になると産生量が低下し、半減期も5日と短いため抗原感作後に一過性の増加を示すことになる。その産生量は、IgGに比較すると低値である。IgMに属する抗体には、同種血球凝集素、寒冷凝集素、Paul-Bunnell抗体、リウマチ因子、Wassermann抗体、グラム陰性菌体抗原に対する抗体などがある。日常の臨床では、血清中のIgMは感染症の診断のため感染要因に対するIgM型特異抗体として、測定することが多い。各種疾患の診断や、予後、重症度、経過観察などの目的でもIgMは測定され、通常はIgGやIgAと組み合わせて判断される。IgMはFc部分を5個、Fab部分を10個とそれぞれIgGの5倍もつため、補体結合性、凝集活性、オプソニン活性が強く細菌に対する免疫防御反応や、赤血球の凝集能などに強力な作用を及ぼしている。分子量が大きいIgMは、胎盤移行性がなく母親から胎児へ移行することがないため、新生児の血清濃度上昇は子宮内感染を受けたことを示唆している。
● 異常値の検査と主な疾患
基準範囲 31〜252 mg/dl
小児の基準値
 IgGは胎盤通過性があり出産直後は成人レベルとなる。出生時から自身の産生はあるが、半減期が20日余りであることから母体由来のIgGは急速に低下、総IgG量としては生後3〜4ヶ月で最低となり、その後、産生組織の発達に伴い、血中濃度は徐々に増加し10歳頃成人レベルに達する
検査方法 免疫比濁法
高値を示す主な疾患: 多クローン性: 肝疾患(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、ルポイド肝炎)、感染症急性期、膠原病(シェーグレン症候群、慢性関節リウマチ、SLE)、ネフローゼ症候群、悪性腫瘍(Hodgkin病、リンパ芽球性リンパ節症など)、高IgM症候群
単クローン性: 原発性マクログロブリン血症、μ鎖病、Schnitzler症候群、monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)
低値を示す主な疾患:
原発性免疫不全症候群: X染色体性無γグロブリン血症、常染色体劣性無γグロブリン血症、選択的IgM欠損症、胸腺腫を伴う免疫不全、common variable immunodeficiency(CVID)、重症複合免疫不全症(SCID)[ADA欠損症、XSCIDなど]、Wiskott-aldrich症候群
続発性免疫不全症候群: リンパ系腫瘍(CLL、悪性リンパ腫など)、自己免疫性疾患、慢性感染症、免疫抑制療法・抗腫瘍療法(免疫抑制剤、抗癌剤、X線照射)、AIDSを含むウイルス感染症、蛋白漏出によるもの(蛋白漏出性胃腸炎など)、膵臓・胸腺・虫垂摘出後


 ⇒ 免疫グロブリン

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