Subject : 交感神経と副交感神経(自律神経:二重拮抗支配)
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
交感神経と副交感神経
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人間の体は交感神経と副交感神経によって支配(コントロール)されています。
これを二重拮抗支配と呼んでいます。二重とは2つの神経があるということです。
拮抗とは、互いに反するということで、交感神経と副交感神経は、全く逆の作用を示します。アクセルとブレーキを思ってもらえば良いでしょう。
交感神経は昼の神経、さらにはエネルギーを消費する神経で一番極端な例を挙げますと、人が喧嘩をしている時の状態を思い浮かべていただければ、よく理解できます。
即ち、目は大きく開かれ、心臓の鼓動は高まり、息づいは荒く、血圧は上昇し、気管支は拡張します。
副交感神経は、その逆で夜の神経と言われ、エネルギー(血糖値、脂肪等)は蓄積する方向に働きます。即ち、消化機能(消化管の分泌、蠕動等)を促進させます。
- ■ 刺激剤と遮断剤
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交感神経と副交感神経には、それぞれ刺激剤と遮断剤(ブロッカー)が
あります。
副交感神経の刺激剤は、コリン、コリンエステラーゼ阻害剤
副交感神経の遮断剤には、抗コリン剤があります。
瞳孔(黒目)の例で考えてみますと、交感神経刺激剤では散瞳(黒目が大きくなる)、ブロッカーでは、縮瞳(黒目が小さくなる)、抗コリン剤(アトロピン等)では散瞳となります。その他、心臓や平滑筋(内臓の筋肉)の収縮に関することなどがすべてこの関係で成り立っています。
この理屈で言うと、交感神経の刺激剤と抗コリン剤、交感神経の遮断剤と副交感神経の刺激剤は、見かけ上はよく似た作用を示すのです。
- ■ 交感神経作動薬
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交感神経が刺激されると、ヒトは興奮した状態(極端な例では喧嘩をしている時の状態)になることは既に述べました。心臓はドキドキと早くなり、息つかいはは荒く、目は大きく見開かれ、血圧も高くなります。
この作用は、
アドレナリン(エピネフリン)または
ノルアドレナリンによって引き起こされます。そしてその作用はα作用とβ作用に分けて考えられています。
α作用 〜血管収縮――→血圧上昇、局所での止血作用
β作用―β1作用〜心臓の活性化
β2作用〜気管支の拡張
ノルアドレナリンはα作用が強く、低血圧やショックに、
アドレナリンはβ作用が強く、気管支喘息や局所麻酔に併用して用いられます。
交感神経のα受容体(レセプター)が興奮すると人体では次のようなことが起こります。
血管〜収縮、瞳孔〜散大、皮膚〜立毛
このうち、臨床的に最も多く応用されるのが血管の収縮です。血管が収縮することで血圧は上昇します。また局所で血管が収縮すれば止血作用になります。
薬品としては、ボスミン、ノルアド注などがあります。
また、キシロカインEのEというのはエピネフリン(ノルアドレンリン)のことで、これも血管を収縮させて、キシロカイン(局所麻酔剤)をその場所にとどめておく目的(作用時間を延長さす)で添加されています。
β受容体(レセプター)が刺激されると人体では次のようなことが起こります。
心臓の収縮力増加、心拍数増加、気管支拡張、肝臓で糖の分解
β受容体を刺激する薬
イソプロテレノール〜気管支拡張:気管支喘息
塩酸ドパミン〜ショック治療剤、ドブタミン〜強心剤(急性心不全)
塩酸リトドリン〜切迫流早産治療剤
交感神経刺激剤と副交感神経遮断剤(抗コリン剤)は一見同じような作用を示します。同じ理屈で副交感神経刺激剤と交感神経の遮断剤(βブロッカー等)は見かけの作用は同じようです。
なお、αとβのレセプターにはそれぞれ1と2のサブタイプがあります。
α2刺激剤は脳における血管中枢での後シナプス受容体(α2受容体)を刺激して降圧作用を示します。つまり、α2受容体は、安全弁みたいなもので、
アドレナリンが出過ぎたら、それをα2受容体が感知してそれ以上アドレナリンが出ないようにする働きがあります。
⇒
神経系
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