Subject   : クロマチン(chromatin)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 クロマチン(chromatin)
クロマチン(chromatin)とは、真核細胞内に存在するDNAとタンパク質の複合体のことを表す。元来、『核内の染色される物体(染色質)』を意味しており、ゲノムDNAの貯蔵形態としての役割が強調されてきたが、分子生物学の発展とともに意味合いは変わってきた。すなわち、クロマチンの構造とダイナミックスは、遺伝子の発現、複製、分離、修復等、DNAが関わるあらゆる機能の制御に積極的な役割りを果たしていると考えられるようになってきた。
具体的には、まずDNAがヒストン八量体に巻きついてヌクレオソーム構造を取る。こうした構造が150-200bpの周期で繰り返される。さらにこのヌクレオソーム繊維が折り畳まれ、直径30 nmのクロマチン繊維(30 nmファイバー)を形成する。その構造を説明するものとして、ソレノイドモデル等、多数のモデルが提出されているが、まだ定説はないのが現状である。
細胞分裂期にはいると、このクロマチン構造がコンデンシン複合体等の働きによってさらに組織的に折り畳まれ、よりコンパクトな染色体構造に変換される。この過程は染色体凝縮と呼ばれ、染色体が正確に分離されるために重要である。

■ クロマチンの種類
クロマチンには、大きく分類してユークロマチン (euchromatin) とヘテロクロマチン (heterochromatin) の二種類がある。ユークロマチンはクロマチン構造がゆるまっており、転写されている遺伝子はこの部分に多く存在する。ヘテロクロマチンは密に凝集しており、この領域ではあまり転写が起きていない。この部分は、染色体の構造上の変化に際して何らかの役割を負っていると考えられている。ヘテロクロマチンは更に次の二つに分類することができる。遺伝子の発現はほとんど見られない構成的ヘテロクロマチン (constitutive heterochromatin) と、条件によっては遺伝子の発現が見られる条件的ヘテロクロマチン (facultative heterochromatin) がある。前者は主にセントロメア付近にあり、この領域の DNA は繰り返し配列に富む。

 ⇒ 染色体(Chromosom)

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