Subject   : がん発生防止の仕組み

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 がん発生防止の仕組み
がんは遺伝子(DNA)の異常によっておこります。 そもそもDNAはいろいろな理由で傷つきます(変異という)。それは、発がん物質や紫外線により細胞内で発生した活性酸素によるDNAの損傷であったり、複製時に行われる遺伝子のコピー(DNA複製)のミスであったり、1つの細胞が2つに分かれる細胞分裂の時に失敗して染色体がちぎれたりすることによります。幸いなことに、人の場合遺伝情報を保持している「遺伝子」は全ゲノムの数%にすぎず、その他の90%以上の領域に変異が入っても生命活動には何ら影響が無く、また遺伝子領域の変異であったとしてもそれが即生命を脅かすとは限りません。一方で、細胞の増殖やその抑制に関わる遺伝子にたった一カ所でも変異が入った場合、がんを発生させるに十分である場合もあります。増殖因子(例えばEGF:上皮成長因子)やその下流のシグナル伝達因子(Rasなど)が亢進したり、逆に がん抑制遺伝子であるp53という遺伝子が変異により機能低下する場合は、がんを誘導する重要な要因としてよく知られています。

人間(生物)は、DNA損傷がいつでも起こりうるということを前提に何段階もの安全装置を進化発展させて来ました。

第一段階:DNA損傷や複製の間違いを検出し修復します。DNA二重鎖のミスマッチ部位に結合・修復したり、損傷により生じた異常なDNAや構造変化を修復する遺伝子群が知られています。

第二段階:細胞の増え方を監視する機構があります。細胞はDNA複製 ->細胞分裂という「細胞周期」を経て増殖を繰りかえします。そのサイクルが正しいタイミングで行われるかをチェックし、必要ならば一定の段階で細胞周期を停止させます。

第三段階:異常な細胞を殺します。DNAが修復不可能なレベルまで損傷したり、細胞周期制御が正しく働かずDNAに重大な異常がおこった細胞をアポトーシスにより死滅させます。

すなわち、単一の遺伝子の変異によってがんとなるケースはあまりなく、何段階ものチェック機構の破綻を伴って初めてがんという病気が成立するのです。

 ⇒ がんの撃退方法

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