Subject : サイクリンとCDK阻害因子
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
サイクリンとCDK阻害因子
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海産無脊椎動物卵の細胞周期の進行に応じて周期的に変動するタンパク質(サイクリン)を発見
⇒ サイクリンA,Bと命名された。これらはM期の終わりに消失する。
Cdc2(CDK1)とサイクリンA,Bが発見されたが,細胞周期はこれらだけで制御されるのか?
後に多くのCDKとサイクリンが発見され,細胞周期の各段階は,異なるCDK-サイクリン複合体で制御されていることが明らかとなった。また,細胞周期を制御する第3の分子,CDK阻害因子(CDKインヒビター)が発見され,細胞周期の制御は極めて複雑な機構であることが分かった。さらに,細胞周期では,サイクリンの合成だけでなく,プロテアソームによる分解が重要な役割を果たしている。
- ■ サイクリンファミリー
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M期はCdc2 (CDC28)とサイクリンB[Mサイクリン]複合体で制御されることが分かったが,G1期はどのように制御されているの か?
⇒ G1サイクリンC, D, E, F, G, H, I, Tの発見へ。
現在,哺乳類では約20種のサイクリンが見つかっている。A1, A2, B1, B2, C, D1, D2, D3, E1, E2, F, G1, G2, H, I, K, T1, T2a, T2b
サイクリンT-CDK9はRNAポリメラーゼのC端ドメイン(CTD)をポリリン酸化し,転写を促進する。
- ■ CDKファミリー
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酵母の遺伝子cdc2(CDC28)は1種のみ。高等真核生物ではCdc2と似た遺伝子が9種ある。
- ■ CDK阻害因子
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酵母のtwo-hybrid法を用いた研究から,サイクリン-CDK複合体に結合し,活性を阻害するタンパク質群CDK阻害因子(CDK inhibitor, CKI)が発見された(1990年代半ば)。これらは次の2つのファミリーに分類される。いずれも,G1チェックポイントに関与する。
@Ink4ファミリー: p15Ink4b, p16Ink4a, p18Ink4c, p19Ink4d
アンキリンリピートが存在。サイクリンD-CDK4,6を阻害する。サイクリンと拮抗することで,CDKの作用を抑制する。
ACip/Kipファミリー: p21Cip1, p27Kip1, p57Kip2
CDK結合領域が存在。サイクリンE-CDK2複合体に結合し,CDK活性を阻害する。
p21Cip1はPCNA結合領域をもち,また,老化細胞の増殖停止にも関与する。
- ■ 細胞周期の制御とサイクリン-CDK
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細胞周期 |
メモ |
G1期の通過 |
サイクリンD-CDK4 |
S期の開始 |
サイクリンE-CDK2 |
S期の通過 |
サイクリンA-CDK2 |
G2期の通過 |
サイクリンA-CDK1(Cdc2) |
M期の開始 |
サイクリンB-CDK1(Cdc2) |
また,種々のサイクリン-CDKの活性化に
サイクリンH-CDK7複合体(CAKなど)が必要。
CDKがエンジン,サイクリンはアクセル,CKIはブレーキ。
⇒
細胞周期のエンジンとブレーキ
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