Subject   : 解糖(glycolysis)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 解糖(glycolysis)
 解糖(glycolysis)はほとんど全ての生物に共通に存在する糖の代謝経路で,反応は細胞質で行われる。解糖は Embden-Meyerhof 経路とも呼ばれ,本来、D-グルコースの嫌気的分解による乳酸やエタノール生成までの過程(発酵という)を意味したが、好気的条件下でもピルビン酸までは全く同じ経路をたどる事が分かった。ただし,ある種の微生物はEmbden-Meyerhof 経路とは少し異なるEntner-Doudoroff経路を利用する。  狭義の解糖は以下の10段階の反応で構成される。 の2つがある。
  1. 細胞に取り込まれたグルコースはすぐに6-リン酸化される。ATP消費。
  2. グルコース 6-リン酸(G-6-P)はフルクトース 6-リン酸(F-6-P)に異性化される。
  3. F-6-Pはさらに二リン酸に変えられる。ATP消費。
  4. 生じたフルクトース 1,6-ビスリン酸(FBP)はアルドール開裂により,ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)とグリセルアルデヒド 3-リン酸(GAP)になる。
  5. DHAPはGAPに異性化される。4で分かれた2つの経路がこれで1つになる。
  6. 無機リン酸を利用してGAPを1,3-ビスホスホグリセリン酸(BPG)に変える。この段階はNAD+を消費する。
  7. BPGの1位のリン酸基をADPに転移し,ATPを合成(基質レベルのリン酸化)するとともに,3-ホスホグリセリン酸(3-PG)に変える。
  8. 3-PGを異性化する。
  9. 生じた2-ホスホグリセリン酸(2-PG)から,脱水反応により高エネルギー化合物であるホスホエノールピルビン酸(PEP)をつくる。
  10. PEPの2位のリン酸基をADPに転移し,ATPを合成(基質レベルのリン酸化)する。エノール型のピルビン酸は互変異性によりひとりでにピルビン酸になる。


 嫌気的条件下では,解糖はピルビン酸を経て乳酸やエタノールの生成をもって終了する(発酵)。解糖の段階(6)でNAD+が消費されるが,その細胞質内濃度は限られているため解糖を続行するためには再生する必要がある。そこで,経路をピルビン酸で止めずに乳酸やエタノールをつくることによっててNAD+の再生を行う必要がある。  生じた乳酸は肝臓に送られ,また元のピルビン酸に戻されて,糖新生やTCA回路で有効に利用される(コリ回路)。

■ 標準自由エネルギー変化(DG0')と生理的条件での 自由エネルギー変化(DG) 単位,kJ/mol
反応 酵 素 DG0' DG 反応
1 ヘキソキナーゼ -20.9 -27.2 グルコース ⇒ グルコース 6-リン酸
2 グルコースリン酸イソメラーゼ +2.2 -1.4 ⇒ フルクトース 6-リン酸
3 ホスホフルクトキナーゼ -17.2 -25.9 ⇒ フルクトース 1,6-ビスリン酸
4 アルドラーゼ +22.8 -5.9 ⇒ ジヒドロキシアセトンリン酸
 +グリセルアルデヒド 3-リン酸
5 トリオースリン酸イソメラーゼ +7.9 +4.4 ⇒ ジヒドロキシアセトンリン酸
グリセルアルデヒド 3-リン酸
6 グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ -16.7 -1.1 ⇒ 1,3-ビスホスホグリセリン酸
7 ホスホグリセリン酸キナーゼ ⇒ 3-ホスホグリセリン酸
8 ホスホグリセロムターゼ +4.7 -0.6 ⇒ 2-ホスホグリセリン酸
9 エノラーゼ -3.2 -2.4 ⇒ ホスホエノールピルビン酸
10 ピルビン酸キナーゼ -23.0 -13.9 ピルビン酸


 ⇒ 小腸と腸液

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