Subject   : アンモニアの神経毒性

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 アンモニアの神経毒性
 アンモニアには、神経毒性(neurotoxity)がある。

アンモニアは、神経細胞のエネルギー産生を低下させたり、神経伝達物質を低下させたり、脳浮腫を来たす。  アンモニアは、正常な状態でも、腸管(gut)や腎臓で、生成され、肝臓(尿素回路とグルタミン合成酵素)や骨格筋などで、処理される。  筋肉は、脳と同様に、平常時には、産生されるアンモニアを、血中に放出しているが、高アンモニア血症時には、グルタミン合成酵素の活性が亢進して、アンモニアを処理する。

 アンモニアは、フリーの形のNH3(free ammonia)と、イオン化した形のNH4+(アンモニウムイオン:ammonium ion)とがある。  体内では、NH4+(アンモニウムイオン)で存在することが多く、NH4+は、難脂溶性だが、NH3は、脂溶性であり、細胞膜を通過し、細胞内に移行し、細胞障害毒性を発揮する。

 肝臓疾患などで、尿素回路が障害され、アンモニアを処理出来なくなり、高アンモニア血症に陥ると、アンモニアが、脳血液関門を容易に移行し、脳障害が起こる。脳では、アンモニアを、GDH(グルタミン酸脱水素酵素)により、α-ケトグルタル酸と結合させ、グルタミン酸を生成し、アンモニアが処理される。その為、α-ケトグルタル酸が消費されて減少し、オキサロ酢酸も低下(減少)し、TCA回路によるNADH2+生成や、呼吸鎖によるATP生成が、停止する。その結果、修復不可能な脳神経細胞障害が起こり、引き続いて、細胞死が起こる。このように、アンモニアにより、エネルギー産生が、低下する。
 GDHにより、グルタミン酸濃度が上昇するが、アンモニアを処理する為に、グルタミン合成酵素により、グルタミンが合成される。そして、神経伝達物質として作用したり、GABA合成の前駆物質であるグルタミン酸が、減少する。このように、アンモニアにより、神経伝達が、低下する。
 グルタミン濃度の上昇は、グリア細胞(astrocytes)の、細胞内浸透圧を増加させ、細胞内の水分量を増加させるので、脳浮腫が、生じる。このように、アンモニアは、グルタミン濃度を増加させ、脳浮腫を来たす。  なお、アンモニア濃度は、血液pHにも、影響を与える。

 ⇒ 生体内でのアンモニアの産生
 ⇒ 尿素サイクル(尿素回路、オルニチン回路)

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