Subject   : 胆汁酸

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 胆汁酸
 胆汁酸(胆液酸)は、肝臓の肝細胞で、コレステロールから生成され、胆汁として胆嚢に蓄えられ、脂肪などの食事を摂取すると、十二指腸に分泌される。  ヒトの胆汁酸には、一次胆汁酸(肝臓で合成される胆汁酸)のコール酸(80%)やケノデオキシコール酸(数%)と、二次胆汁酸(小腸の腸内細菌により一次胆汁酸から生成される)のデオキシコール酸(約15%)やリトコール酸(極微量)とがある。

 胆汁酸は、体内コレステロール代謝の最終産物であり、肝臓は、胆汁として、胆汁酸やコレステロールを、体外に排出する。  胆汁酸を含む胆汁には、水の表面張力を低下させ脂肪を乳化させる作用(脂肪の小腸での消化、吸収を促進する)や、アルカリ性なので胃から十二指腸に送り込まれる酸性の乳びを中和する作用や、多くの薬品、毒素、胆汁色素(ビリルビン)、無機物質(銅、亜鉛、水銀など)を、体外に排出する作用がある。

 胆汁酸は、グリシン、タウリン(アミノ酸エチルスルホン酸:2-アミノエタンスルホン酸)となどと抱合(結合)した後、胆汁として分泌され、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす。  胆汁酸は、抱合型の方が、肝毒性が弱く、肝臓から、胆汁として、良く排出される(胆汁酸は、抱合型の方が、胆汁中への排泄が促進される)。  コレステロールから誘導されるコール酸(胆汁酸)が、タウリンと抱合(アミド結合)すると、タウロコール酸(抱合型胆汁酸)が生成される。コール酸が、グリシンと抱合(ペプチド結合)すると、グリココール酸が生成される。グリココール酸(コール酸のグリシン抱合体)が、一次胆汁酸中では、最も量が多い。  胆汁酸は、正常では、タウリンやグリシンと抱合した、タウロコール酸(taurocholic acid)やグリココール酸(glycocholic acid)として、胆汁液中に入る。ヒトでは、タウリン抱合体とグリシン抱合体との比率は、1:3と言われる。  肝臓で抱合を受けた胆汁酸は、アルカリ性の胆汁中では、胆汁酸塩(ナトリウム塩あるいはカリウム塩)として存在する。    胆汁酸には、一次胆汁酸(肝臓で合成される胆汁酸)のコール酸(CA:cholic acid:肝毒性が弱い)、ケノデオキシコール酸(CDCA:chenodeoxycholic acid)と、二次胆汁酸(一次胆汁酸が腸内細菌により7α-脱水酸化されて生成される胆汁酸)のデオシキコール酸(DCA:deoxycholic acid)、リトコール酸(LCA:litocholic acid:コール酸の7,12α-脱水酸化誘導体:肝毒性が強い)とがある。さらに、ケノデオキシコール酸(CDCA)の7β異性体であるウルソデオキシコール酸(UDCA)が、微量に存在する。  これらの5種類の胆汁酸には、それぞれ、遊離型、グリシン抱合型、タウリン抱合型の3型が存在するので、胆汁酸抱合体分画は、合計15分画に分けられる。  一次胆汁酸抱合体(抱合型一次胆汁酸)は、主に、小腸の回腸末端から吸収され、門脈を経て、肝臓に輸送される(腸肝循環)。  一次胆汁酸抱合体は、一部は、回腸下部〜大腸の腸内細菌により分解(脱重合と脱水酸化)され、二次胆汁酸になる。  胆汁酸は、水の表面張力を低下させ、脂肪の乳化を促進させ、脂肪がリパーゼの作用を受けさせ易くする作用がある。食物中の脂質(中性脂肪)は、十二指腸で、胆汁中の抱合胆汁酸(強い界面活性作用がある)により、乳化(emulsify)され、水中油滴型のエマルジョン(乳濁液)を形成し、膵液中のリパーゼによる分解を受け易くなる。膵リパーゼにより脂質(中性脂肪)が加水分解されて生成される遊離脂肪酸とモノアシルグリセロールは、胆汁酸ミセル(micelle)の形になり、小腸の粘膜上皮細胞に、取り込まれ、胆汁酸が遊離する。  胆汁酸は、脂肪酸、コレステロール(コレステリン)、カロチノイドなどと結合し、吸収を促進させる作用がある。  糞便中の胆汁酸は、主に、細菌の代謝産物として、存在する。

 コレステロールは、成人では、肝臓で、1日当たり0.5〜1.0g生成される。  胆汁酸は、健康人では、肝臓で、1日当たり200〜500mg生成される。この量は、腸で吸収されずに、糞便中に、1日当たり(毎日)喪失する胆汁酸の量に、等しい。  胆汁酸は、上部腸管ではあまり吸収されず、回腸や結腸(特に、回腸末端部)で、主に、受動的に再吸収される。  胆汁酸は、胆嚢から、胆汁と共に、十二指腸へ分泌され、腸管(主に小腸の回腸末端)から吸収され、門脈を経て肝臓に回収され、再利用される(腸肝循環)。  胆汁酸の回収率は、95〜98%と言われる。

 ⇒ 生体内でのアンモニアの産生
 ⇒ 尿素サイクル(尿素回路、オルニチン回路)

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