Subject   : 作動薬と拮抗薬

カテゴリー  : 学術情報 > 薬学


 作動薬と拮抗薬
ほとんどの細胞の表面には、多くの異なるタイプの受容体(レセプター)が存在しています。受容体とは特異的な3次元構造をもった分子のことで、ちょうど鍵が鍵穴にはまるように、ぴったりとはまる物質しか付着できません。神経伝達物質やホルモンなど細胞外の天然物質(体内でつくられる物質)は、受容体を介して細胞の活動に影響を与えています。薬はこれらの天然物質を模倣し、受容体も同じように利用することがよくあります。たとえば、モルヒネなど痛みを緩和する薬は、痛みのコントロールを助ける体内物質のエンドルフィンと同じ脳の受容体を使います。1つのタイプの受容体にしか付着しない薬と、マスターキーのように体内のいくつかのタイプの受容体に付着する薬があります。

受容体を標的にする薬は、作動薬と拮抗薬に分けられます。作動薬はその受容体を活性化もしくは刺激して、細胞の活動を増減する反応を誘発します。拮抗薬は体内にある天然の作動物質、通常は神経伝達物質が受容体に接近して付着するのを阻止し、天然の作動物質に対する細胞の反応を妨げるか減らします。

喘息(ぜんそく)患者では、作動薬と拮抗薬を一緒に使うことができます。たとえば、アルブテロールはイプラトロピウムと併用しても構いません。作動薬のアルブテロールが気道内の細胞の特異的受容体に付くと(アドレナリン作動性)、平滑筋細胞が弛緩して気道が広くなります(気管支拡張)。拮抗薬のイプラトロピウムはコリン作動性の別の受容体に付いて、平滑筋細胞を収縮させて気道を狭くする(気管支収縮)神経伝達物質のアセチルコリンが付くのを妨げます。どちらの薬も気道を広げますが(呼吸が楽になる)、その方法は異なります。

 ■ 受容体のタイプ
薬の中には、作動薬として働いて体内の天然作動物質と同じように受容体を刺激するものと、拮抗薬として働いて受容体への天然作動物質の結合を阻止するものがあります。受容体のタイプごとにさまざまなサブタイプがあり、複数のタイプの受容体に影響する作動薬もあります。

受容体のタイプ 主な作用 作動薬 作拮抗薬
アルファ1 闘争・逃走反応 メトキサミン、フェニレフリン ドキサゾシン、プラゾシン、タムスロシン、テラゾシン
アルファ2 インスリン分泌や血小板凝集 クロニジン ヨヒンビン
ベータ1 心拍数や心収縮力 ドブタミン、イソプロテレノール テノロールやメトプロロールなどのベータ遮断薬
ベータ2 消化管、尿路の平滑筋拡張 アルブテロール、イソエタリン、テルブタリン プロプラノロール
コリン作動性
ムスカリン
心拍数と心収縮力の低下。気道の収縮。全身の血管拡張 ベタネコール、カルバコール アトロピン、イプラトロピウム、スコポラミン
コリン作動性
ニコチン
骨格筋の収縮 一般的に不使用 アトラクリウム、パンクロニウム、ツボクラリン
H1(ヒスタミン アレルギー反応の誘発、気道および消化管の筋収縮、小血管の拡張、眠気(鎮静作用) 一般的に不使用 セチリジン、クロルフェニラミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン、ロラタジン
H2(ヒスタミン) 胃分泌の刺激 一般的に不使用 シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン

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