Subject   : 薬と薬の相互作用

カテゴリー  : 学術情報 > 薬学


 薬と薬の相互作用
同じ時間帯に複数の薬を服用すると、薬の効果が他の薬との相互作用によって変化することがあり、注意が必要です。薬の効果は有益な場合もありますが、無益で有害な場合の方が多くみられます。薬の相互作用には、重複、対抗(拮抗)、1つまたは両方の薬に対する薬物動態の変化などの種類があります。

薬の相互作用は処方薬同士の組み合わせで多くみられますが、アスピリン、制酸薬、充血緩和薬など、最も一般的な市販薬(非処方薬)も含まれます。多くの人はアルコールを薬とは考えませんが、アルコールも薬物と同様に生体のプロセスに影響を及ぼし、さまざまな薬と相互作用を起こします。

 ■ 重複
同じ効果をもつ2種類の薬を服用すると、薬の治療効果と副作用がともに強まる可能性があります。重複は市販薬に多く、うっかりして同じ有効成分を含む2種類の薬を服用したときに起こります。たとえば、かぜ薬と睡眠補助薬はどちらもジフェンヒドラミンを含み、かぜ薬と痛み止めはともにアセトアミノフェンを含みます。
たとえば、高血圧のコントロールが難しい患者に2種類の降圧薬を処方するときなどです。この方法で、血圧がより効果的に下がるだけでなく、1種類の薬を高用量で処方するよりも副作用が少なくなります。癌(がん)の治療でも、より優れた効果と少ない副作用を目的として、いくつかの薬を投与することがあります(併用化学療法)。しかしながら、複数の医師が気づかずに類似した薬を処方したときには、深刻な問題が発生することがあります。たとえば、2人の医師が別々に睡眠補助薬を処方したときや、1人の医師が睡眠補助薬を、もう1人の医師が鎮静作用をもつ別の薬を処方したときなど、過剰な鎮静作用とめまいを引き起こすことがあります。

 ■ 対抗(拮抗)
反対の作用をもつ2つの薬が相互作用すると、一方または両方の薬の効果が低下することがあります。たとえば、痛みを緩和するイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(痛み: 非ステロイド性抗炎症薬を参照)は、体内に塩分や水分を蓄積させることがあり、ヒドロクロロチアジドやフロセミドのような利尿薬は、体内から余分な塩分や水分を取り除く効果があります。両方の薬を併用した場合は、非ステロイド性抗炎症薬が利尿薬の効果を弱めてしまいます。高血圧や心臓病に使うプロプラノロールなどのベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)は、喘息(ぜんそく)の治療で使われるアルブテロールなどのベータ刺激薬の効果を打ち消す作用があります。2種類の薬はともに細胞の同じ受容体(ベータ2受容体)(薬が目指す標的となる細胞の受容体を参照)を標的としていますが、1つのタイプはこれらの受容体を遮断し、もう1つのタイプは刺激します。

 ■ 変化
ある薬によって、他の薬の吸収・分布・代謝・排泄の方法が変わることがあります。薬の中には、多くの薬を不活性化する肝臓のP-450酵素系に作用して、他の薬を通常よりも速く不活性化したり遅く不活性化したりするものもあります。たとえば、フェノバルビタールなどのバルビツール酸がP-450酵素系の活性を高めると、抗凝固薬のワルファリンを速く不活性化してしまうため、同じ時間帯に服用すると効果が減少します。この効果を相殺するためには、ワルファリンの投与量を増やす必要があります。ワルファリンの増量後にフェノバルビタールの投与を中止すると、ワルファリンの濃度が劇的に上昇して、出血の危険性が高まるおそれがあります。こうした場合は、患者を頻繁にモニターし、ワルファリンの投与量を調節する必要があります。

タバコの煙に含まれる化学物質が、いくつかの肝臓の酵素の活性を高めることがあります。このため、喫煙すると、鎮痛薬のプロポキシフェンやテオフィリン(気道を広げる気管支拡張薬)などの薬の効果が減少します。 逆に、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)のシメチジン(潰瘍や胸やけ、胃食道逆流症の治療用)や抗生物質のシプロフロキサシンとエリスロマイシンは、肝臓の酵素活性を弱めて、テオフィリンの作用を持続させることがあります。
 ⇒ 薬との相互作用のおそれがあるハーブ

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