Subject   : 薬に対する寛容性と耐性

カテゴリー  : 学術情報 > 薬学


 薬に対する寛容性と耐性
寛容性とは、人体への薬の効き目が弱まることをいい、薬を繰り返し使用しているうちに、体が薬の継続的な存在に慣れていくと起こります。これに対し、耐性とは、微生物または癌細胞が通常なら有効なはずの薬の作用に対して抵抗する能力のことをいいます。

 ■ 寛容性
薬を繰り返し使用していると、薬への寛容性ができることがあります。たとえば、モルヒネやアルコールを長期にわたって使用していると、だんだん量を増やさなければ同じ効果を得られなくなります。寛容性が生じるのは、薬の代謝速度が速くなるため(多くは、薬の代謝にかかわる肝臓の酵素活性の上昇による)や、薬が付く部位(細胞の受容体)の数が減ったり、受容体と薬の結合力(親和性)が低下するためです。

 ■ 耐性
微生物(細菌やウイルス)のある菌株に対し、普通ならそれらに有効である薬を使っても、殺したり増殖を抑えることができなくなった場合、その菌株は耐性を獲得したといわれます。細菌の耐性株は、細菌が変異を起こしたり、他の細菌から耐性をつかさどる遺伝子が伝播することで生じます(抗生物質: 抗生物質に対する耐性を参照)。癌細胞も、変異によって薬に対する耐性を生じる場合があります

 ■ 変化
ある薬によって、他の薬の吸収・分布・代謝・排泄の方法が変わることがあります。薬の中には、多くの薬を不活性化する肝臓のP-450酵素系に作用して、他の薬を通常よりも速く不活性化したり遅く不活性化したりするものもあります。たとえば、フェノバルビタールなどのバルビツール酸がP-450酵素系の活性を高めると、抗凝固薬のワルファリンを速く不活性化してしまうため、同じ時間帯に服用すると効果が減少します。この効果を相殺するためには、ワルファリンの投与量を増やす必要があります。ワルファリンの増量後にフェノバルビタールの投与を中止すると、ワルファリンの濃度が劇的に上昇して、出血の危険性が高まるおそれがあります。こうした場合は、患者を頻繁にモニターし、ワルファリンの投与量を調節する必要があります。

タバコの煙に含まれる化学物質が、いくつかの肝臓の酵素の活性を高めることがあります。このため、喫煙すると、鎮痛薬のプロポキシフェンやテオフィリン(気道を広げる気管支拡張薬)などの薬の効果が減少します。 逆に、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)のシメチジン(潰瘍や胸やけ、胃食道逆流症の治療用)や抗生物質のシプロフロキサシンとエリスロマイシンは、肝臓の酵素活性を弱めて、テオフィリンの作用を持続させることがあります。
 ⇒ 薬との相互作用のおそれがあるハーブ

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