Subject : 睡眠時無呼吸症候群の治療薬
カテゴリー : 学術情報 > 薬学
睡眠時無呼吸症候群の治療薬
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睡眠時無呼吸症候群治療(以下SAS)の第1選択は、経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal CPAP)や外科的手術などで、薬物療法は補助的な治療手段です。
呼吸中枢刺激作用を持つ薬剤の中で、酢酸メドロキシプロゲステロン(ヒスロンH、プロベラ錠)、ダイアモックス錠、テオフィリン、ナロキソン注などで、本症候群に対しある程度、効果が認められています。
三環系抗うつ剤は、比較的早くからSASに対して用いられてきました。最近では、新しいSSRIが有効であったことが報告されています。
降圧剤のセロケンやACE阻害剤の一部が、無呼吸指数を有意に低下させたとの報告もありますが、降圧とSAS抑制との因果関係の解明は今後の課題とされています。
- ○ テオフィリン
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アデノシンは、呼吸抑制作用を持っています。この作用に、テオフィリンは拮抗作用を示しますテオフィリンにより、うっ血性心不全患者に見られる中枢型無呼吸には改善が見られます。しかし、テオフィリンには覚醒作用もあるため、無呼吸が改善したとしても睡眠そのものは改善しませんまた、アデノシンは睡眠をもたらす候補物質でもあり、SAS患者の末梢血中で増加することが示されています。
閉塞型無呼吸症候群には無効またはわずかに有効とする研究があるものの、その有用性に関してはまだ結論は出ていません。
- ○ ナロキソン
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ナロキソンなどのオピオイド拮抗薬は、全般的な大脳刺激作用を介して呼吸を促進します。またSAS患者の脳脊髄液中にはオピオイドが増加しているとの報告があります。いくつかのオピオイド拮抗薬を用いた治験では、無呼吸の平均持続時間を若干短縮する程度で、臨床的に有用であるといは言えません。
- ○ 酢酸メドロキシプロゲステロン
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酢酸メドロキシプロゲステロンは女性ホルモンの1種で、呼吸促進作用を持つことが知られています。最近の臨床研究では、換気量の二酸化炭素応答の改善がその機序であり、気道開大筋に対する効果がないため、本剤のSASに対する効果は小さいことが判明しています。
しかし、覚醒時にも高二酸化炭素血症のある肥満低換気症候群でSASを合併する女性例では、有効と思われます。
酢酸メドロキシプロゲステロンは、男性に長期にわたって服用すると性機能低下、脱毛を来します。また、男女とも血栓症のリスクが高まります。
- ○ アセタゾラミド
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ダイアモックス錠(アセタゾラミド)は、SASの治療薬として保険適応が認められています。(海外では、未承認)。通常成人、1日1回250〜500mg
代謝性アシドーシスをもたらすことによって、呼吸中枢を刺激します。また、動脈血二酸化炭素分圧に対する換気応答直線を、低い二酸化炭素分圧側にシフトさせる作用があることが実証されています。50%程度の有効率で、中等度以上では有効率は低くなっています。
アシドーシスが確実に起こり、手足末端のしびれ感が多くの患者に見られるので注意が必要です。
呼吸中枢に働きかけて、呼吸ドライブを上げることがSASの治療に役立つか否かという点は、必ずしも明確にはされていません。特に閉塞型無呼吸の場合、上気道の虚脱に吸気努力(吸気の陰圧として現れる)の過剰そのものが関係している可能性があります。
一方、呼吸ドライブの亢進が上気道の開大筋活動を高め、上気道のポテンシー(能力)を上昇させて虚脱を防いでいるのなら、呼吸中枢の刺激は閉塞型無呼吸を含むSASの治療に有効であると考えられます。
⇒
睡眠時無呼吸症候群
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