Subject : 日内リズム
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
日内リズム
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生物が営む生理活動の多くに日内リズムが存在することが明らかにされています。
どの動物にも1日を基調とした睡眠・覚醒のリズムがあり、体温の上昇もほぼ同じ時刻に起こることは以前より知られています。
ホルモンの分泌や神経系の機能にも顕著な日内リズムがみられます。例えば、副腎皮質から分泌されるコルチゾールの血中レベルは、毎日我々が目覚める前後の早朝に最大ピークに達し、睡眠前半期に最低になる周期的な変動を繰り返しています。その最大値と最低値の間には数倍から時には10倍以上にも達する大きな違いがあります。
成長ホルモン、インスリン、ACTH、甲状腺ホルモンなどこれまでに検索されているほとんどのホルモン分泌で、各ホルモンに固有の日内リズムが報告されています。
さらに、カテコールアミン類、アセチルコリン、セロトニン、ヒスタミンなどの化学的伝達、その他の神経機能に直接関与していると考えられる多くの物質の脳内濃度にも、顕著な日内リズムがあることが見出されています。
この様に体の生理的基盤が1日を通して一定の状態にあるのではなく周期的に変動しているという事実を薬理学的に解釈するなら、同じ量の薬物を与えても、それによって得られる効果は、その薬物をどの時間帯に服用したかによって量的、質的に異なることが予想されます。
こうした時間薬理学の臨床への応用も既に始まっています。具体的な試みとして、制癌剤の使用に関する波状療法、喘息の時間療法、服用時間の選択によるステロイド剤の副作用の減弱、関節リューマチ・歯科治療での痛みのコントロール、インスリンの注射時刻の選択など数多くあります。
- ■ サーカディアンリズム
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睡眠・覚醒、摂食、生殖、代謝、生理など生体のほとんど全ての基本的生命現象には約24時間を1周期とする概日リズム(サーカディアンリズム)があります。
このリズムを支配する体内時計機構は視床下部の視交叉上核(supra chiasmatic nucleus:SCN)あるいは松果体(pineal gland)に存在し、これらが機能的に結び付いて概日リズムを形成していると考えられています。
1997年CLOCK遺伝子、Per遺伝子、1999年には光受容体と考えられていたクリプトクローム(Cry)ファミリーのCry1、Cry2が発見一方、体内時計の分子機構の解明と並行して、SCNの時刻発信を直接的に伝達し外界の明暗情報を神経内分泌情報へと変換するメラトニンの臨床応用も盛んに検討されています。
主に松果体でトリプトファンからセロトニンを経て生合成されるメラトニンは性腺抑制作用、鎮静・催眠作用、抗ストレス作用などを持つことが知られています。これらの作用の中で、メラトニンの本質である生体リズムへの作用ならびに催眠作用から時差症候群の予防・治療と交替勤務症候群の治療にメラトニンが既に臨床応用されその有効性が認められています。
また、最近では、体内時計の変調により睡眠相が慢性的に遅れ、概日リズムの位相を正常化させる時間療法が唯一有効とされている睡眠相後退症候群(DSPS)にもメラトニンの有効性が報告されています。さらにメラトニンの臨床応用の可能性としてICU(集中治療室)の入院患者に認められる正常な睡眠が不足し、夜間のメラトニン分泌が欠如し昼夜の増減リズムが平坦になることから、入院中に問題となるICU症候群(ICU患者は興奮・錯乱を起こす傾向にあり、その多くは一時的な精神病に発展する)の予防と治療でのメラトニンの有効性が示唆されています。メラトニンの副作用眠気、頭痛、などが知られていますが、重篤な副作用はまだ報告されていなません。
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メラトニン(melatonin)
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