Subject   : 電気化学バイオセンサー

カテゴリー  : 学術情報 


 電気化学バイオセンサー
 現在,最も盛んに研究されているのが,このタイプのセンサーである。基本となる電極の性質により電流を検出するアンペロメトリックセンサーと電位変化を検出するポテンショメトリックセンサーに大別される。

 ○ アンペロメトリックバイオセンサー
 アンペロメトリックセンサーでは,酸素電極や過酸化水素電極を基礎としたグルコースセンサーなどが既に実用化している。しかし,安定性などにも依然として問題が残されており,その解決のために酵素の固定化法を,スペーサー分子を導入したり,ポリマー分子M)を同時固定などするなどに工夫する報告がみられる。  原理的な面でも,酵素の反応による酸素や過酸化水素などの電極活物質の濃度変化を電解電流として検出する従来の方式ではなく,酵素分子と電極との直接的な電子授受を行い,酵素反応における電子の流れを電気信号に変換する試みが数多く行われてきている。この原理のセンサーは測定対象物中の溶存酸素の影響を受けず,オキシダーゼ反応以外の酸化還元酵素にも適用できる利点を持っている。 また,酵素反応を電気化学的に制御するという意味でも注目を集めている。実際には金属などの固体電極と酵素タンパク質問の電子移動は酵素の酸化還元中心が内部に埋もれているため難しく,フェロセン類や,ベンゾキノンなどの拡散可能な低分子のメディエーターを電極内に保持させたり,ポリピロール,フェニレンジアミン,ポリビニルピリジンなどの高分子薄膜中に酵素を包括固定化して電子ワイヤーの機能を持たせるなどの工夫がなされている。また,電子メディエーターの役割を果たすフェロセンをグルコースオキシダーゼの糖部分に共有結合させたり,酵素をTTF(テトラチアフルバレン)で修飾する3)などの酵素の機能改変も行われている。また,電極材料として,TTF+TCNQ-などの導電性有機塩を用いるとグルコースオキシダーゼとの電子移動がスムースに行われたという報告もある。  他に注目すべき技術的進歩としては,電極のミクロ化が挙げられる。最近の文献で食品に関連した成分の測定例としては,グルタミン酸,リン酸,過酸化水素,ピルビン酸,コレステロール,尿酸,リンゴ酸,アスパラギン酸などが報告されている。また微生物や組織を利用したセンサーでは,酵母の細胞壁を利用したショ糖センサー,酵母をカーボンペースト電極中に練り込んだエタノールセンサー,豆の組織を利用したポリアミンセンサーなどが挙げられる。

 ○ ポテンショメトリックバイオセンサー
 ポテンショメトリックセンサーでは,小型化,集積化を指向して,イオン感応性電界効果トランジスター(IFSET)のバイオセンサーへの応用研究が盛んである。  イオン選択性電極との組み合わせでは,アンモニア電極を基礎とした尿素センサーや,H+-電極を基礎として,蛋白分解酵素を固定化したペブチドセンサー,インベルターゼ,グルコース,フルクトースオキシダーゼ,グルコノラクトノーゼといった複数酵素を組み合わせたショ糖センサーが報告されている。またIFSETを使った興味ある例としては,アセチルコリンエステラーゼをIFSETのpH感応ゲート部に固定して酵素反応を測定できるようにし,有機リン殺虫剤の酵素反応阻害効果を利用して殺虫剤濃度を検出するものも報告された。
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