Subject : デングウイルス(DENV)
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
デングウイルス(DENV)
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デングウイルス(DENV)は、フラビウイルス科フラビウイルス属のRNAウイルスである。同じ属には、黄熱病ウイルス、ウエストナイルウイルス、セントルイス脳炎(St. Louis encephalitis)ウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス(Tick-borne encephalitis virus)、キャサヌール森林病(Kyasanur forest disease)ウイルス、オムスク出血熱(Omsk hemorrhagic fever)ウイルスがある。これらのほとんどは、節足動物(蚊やマダニ)が媒介しているため、アルボウイルス(節足動物媒介性ウイルス)とも呼ばれている。 デングウイルスには4つの型(1、2、3、4型)が存在する。いずれの型のデングウイルス感染によっても同様の病態を示す。都市型のデングウイルス感染ではヒトが自然宿主となっており、蚊ーヒトー蚊が感染サイクルである。
デングウイルスは直径40〜50 nmの球形ウイルスで、フラビウイルス科、フラビウイルス属に分類される。蚊(主に、ネッタイシマカ、時にヒトスジシマカ)によって媒介される熱性疾患を引き起こす。蚊の吸血時に、蚊の唾液中に存在していたウイルスが、ヒトの毛細血管内に、または毛細血管周囲の組織に注入され、そこに存在している主として単球/マクロファージ系細胞や樹状細胞を宿主として増殖する。このウイルスが血管を通して全身に回る。感染者の多くは不顕性に経過するが、一部の感染者では、この感染複製急性期(感染3〜7日目)に突然の発熱(39〜40℃)で始まるデング熱や、血管透過性の亢進による血漿漏出を伴うデング出血熱を引き起こす。デング熱は、感染後2〜10日ほどで突然の高熱で発症し、頭痛、眼の奥の痛み、腰痛、筋肉痛、骨痛が主な症状として現れ、さらに食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、脱力感、全身倦怠感も現れることがある。また、全身のリンパ節の腫れが見られる場合がある。発熱してから3〜5日目には胸、背中、顔面、腕、脚に発疹が出ることもある。デング熱は1週間から10日ほどで通常は後遺症を残すことなく回復する。一方、デング出血熱は致死的な病態を示すことがある。デングウイルスに感染したヒトのうち、最初はデング熱とほぼ同様に発症し経過するが、熱が平熱に戻るころに血液中の液体成分(血漿)が血管から漏れ出したり、出血の症状が現れたりする場合があり、これをデング出血熱と呼んでいる。デング出血熱では、補体系の異常活性化が認められ、血小板は減少する。血漿漏出がさらに進行すると、循環血液量の不足からショック症状を示すようになる。
デングウイルス感染者は、世界の熱帯地域で年間1億人にも達している。その内、約25万人がデング出血熱を発症すると推定されている。致死率は国によって数パーセントから1パーセント以下と様々であるが、全世界での感染者総数が多く、さらに近年その感染者は増大していることから深刻な問題となっている。デングウイルス感染症は有効なワクチンがないこと、発症の機序が明らかになっていないことなどから病態解明および治療法の確立が望まれている。
<出典:Wikipedia>
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