Subject : 記憶免疫キラーT細胞
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
記憶免疫キラーT細胞
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T細胞は、獲得免疫システムの中核を成す細胞で、血液中や組織の中など体中に存在する。細胞表面に存在する分子によって大きくCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の2種類に分類される。CD4陽性T細胞は、抗原を認識すると他の免疫細胞を活性化するなどの機能を持ち、CD4陽性ヘルパーT細胞とも呼ばれる。一方、CD8陽性T細胞は、他の細胞を直接殺傷する機能を持つため、CD8陽性キラーT細胞とも呼ばれる。抗原に感作されたT細胞は増殖し活性化した後、一部は記憶免疫化し、次に抗原にさらされた場合に素早く反応する機能を獲得する。
ヘルパーT細胞、キラーT細胞はそれぞれ、分化段階や機能性によりいくつかの分画に分かれる。反応する抗原(病原体など)にまだ遭遇していないT細胞集団は
ナイーブ(型)(naive phenotype: NP)と呼ばれ、体内をパトロールしている。ナイーブ(型)T細胞が抗原刺激を受けると活性化して増殖し、侵入してきた病原体と戦う多くのエフェクターT細胞や二度目の感染に対して強く速い応答を起こす記憶T細胞などへと分化する。これら抗原刺激後のT細胞は記憶(型)T細胞と総称され、Central memory(CM)、Effector memory(EM)、Terminally differentiated effector memory T cells re-expressing CD45RA(TEMRA)などに分類される。たとえば、CMは抗原刺激後の高い増殖能を維持しており、多くのエフェクターT細胞をつくることができる。TEMRAは最終分化したT細胞で、エフェクター機能は高いが増殖能は失いつつあり、感染後すぐに機能できる可能性が高いが、やがて死んでしまうと考えられる。
新型コロナウイルスなど初めて我々が遭遇する病原体に対する記憶型細胞は、未感染者には通常存在しないと考えられる。しかし、風邪症状を起こす他のコロナウイルスの記憶型T細胞の一部が、新型コロナウイルスにも反応しうる(=交差反応)ことが報告されている。未感染者がもともと持っているこの交差反応性T細胞の数や性質の違いが、COVID-19の症状の地域差、年齢差、個体差を生む一因となる可能性が指摘されている。
<出典:理研>
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