Subject   : 交差活性、交差免疫

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 交差活性、交差免疫
 エピトープは時に交差反応を起こす。この性質を利用して、免疫系は抗イディオタイプ抗体による制御を行っている(ノーベル賞受賞者のニールス・イェルネによって最初に提唱された)。ある抗体が抗原のエピトープに結合すると、そのパラトープが別の抗体のエピトープになり、別の抗体がそのエピトープに結合する可能性がある。この二次抗体がIgMクラスのものであれば、その結合によって免疫応答がアップレギュレートする可能性があり、二次抗体がIgGクラスであれば、その結合は免疫応答をダウンレギュレートする可能性がある。

<出典:Wikipedia>

「交差免疫」とは,過去に「ある病原体」に感染したことで,その病原体に似ている別の病原体に対しても働く「免疫」のことである。これはSARS-CoV-2に限った現象ではない。古くは,18世紀にジェンナーによって行われた「種痘」の実験がある。当時すでに牛痘にかかったことがある者は天然痘に罹らないことが経験的に知られていた。そのような背景から,ジェンナーは牛痘ウイルスをヒトに感染させた後に,天然痘ウイルスを感染させると,天然痘を発症しないことを実験し,確認した。これは,牛痘ウイルスに対する免疫が,ヒトの天然痘ウイルスに対して交差反応することを利用したものである。

ウイルスや細菌が体の中に入ると、それが抗原となり抗体ができます。例えば、ある抗原Aのタンパク質と構造的に似たような別の抗原Bがあった場合、Aに対する抗体がBに対しても作用する場合があるのです。

胃腸炎を引き起こすロタウイルスは全部で8種類あると言われていますが、ワクチンは1価、もしくは5価です。しかしワクチンに入っていない型でも交差的に抗体が働くことで、完全に発症を防げないまでも重篤化を防ぐことが出来ます。

これは免疫が良い方に作用した場合ですが、逆もあります。アレルギーにおける交差反応です。このブログでも何度か紹介していますが、一番日本人に身近なのは「スギ花粉」の交差反応です。スギ花粉に対してアレルギーを持っている場合、スギ花粉とタンパク質の構造が似ている「シラカバ」や「ハンノキ」に対してもアレルギーが発症します。さらにそれが「バラ科」の植物に広がってしまうというのが、まさに交差反応なのです。

● 新型コロナウイルスの交差免疫
 「新型コロナウイルスに対しても、交差免疫がある」という論文が発表されました。過去に感染した旧型のコロナウイルスに対する免疫が、新型コロナウイルスに対しても有効に働くこともありますが、抗体があることで免疫系が暴走し、症状が重くなる「抗体増強反応」があることもあり得ます。


 ⇒ 抗原と抗体

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