Subject : アネルギー(anergy)
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
アネルギー(anergy)
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アネルギー(anergy)とは、異物に対する生体の防御機構による応答の欠如を示す免疫生物学の用語で、末梢性リンパ球寛容(peripheral lymphocyte tolerance)の直接的な誘導からなる。アネルギー状態(免疫不応答とも呼ばれる)にあるヒトは、免疫系が特定の抗原(通常は自己抗原)に対して正常な免疫応答を開始できないことが多くある。リンパ球が特異的な抗原に応答しない場合は、アネルギー性があると言われている。アネルギーは、寛容を誘導する3つのプロセスのうちの1つで、免疫系を変更して自己破壊を防ぐ。
この現象は、Gustav Nossalによって初めてBリンパ球で報告され、クローンアネルギー(clonal anergy、クローン麻痺(まひ)とも)と呼ばれた。この場合のBリンパ球のクローンは、まだ循環系で生きていることが確認できるものの、免疫応答を開始することはできない。その後、Ronald SchwartzとMarc Jenkinsは、Tリンパ球にも同様のプロセスがあることを報告した。多くのウイルス(HIVが最も顕著な例)は、免疫システムを回避するために寛容誘導を利用しているようで、特定の抗原の抑制はより少数の病原体(特にらい菌)によって行われている。
細胞レベルでは「アネルギー」とは、免疫細胞がその標的に対して完全な応答を開始できないことである。免疫系では、リンパ球と呼ばれる循環細胞が一次軍隊を形成して、病原性ウイルスや細菌、寄生生物から体を守っている。リンパ球には大きく分けてTリンパ球とBリンパ球の2種類がある。人体に存在する数百万個のリンパ球のうち、特定の感染性病原体に特異的に作用するものは実際にはわずかしかない。感染時には、この数少ない細胞を動員して、急速に増殖させる必要がある。「クローン増殖」(clonal expansion)と呼ばれるこのプロセスにより、体は必要に応じてクローンの軍隊を迅速に動員することができる。このような免疫応答は予測的であり、その特異性は、特定の抗原に応答して増殖するリンパ球の既存のクローンによって保証されている(「クローン選択」(clonal selection)と呼ばれるプロセス)。次に、この特定のクローン軍は、体が感染から解放されるまで病原体と戦う。感染が解消されると、不要になったクローンは自然に消滅する。
しかし、体内のリンパ球軍隊の中には、健康な体に通常存在するタンパク質と反応する能力をもつものが存在する。これらの細胞がクローン増殖すると、体が自分自身を攻撃する自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。このプロセスを防ぐために、リンパ球は固有の品質管理機構を持っている。この仕組みは、リンパ球が増殖するきっかけが体内のタンパク質である場合、リンパ球の増殖能力を抑制する。T細胞アネルギーは、T細胞が特異的な抗原認識のもとで適切な共刺激を受けない場合に生じる可能性がある。B細胞アネルギーは、可溶性循環抗原への暴露によって誘発される可能性があり、表面IgM発現のダウンレギュレーションおよび細胞内シグナル伝達経路の部分的遮断によって特徴づけられることがよくある。
<出典:Wikipedia>
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