Subject   : HHV-6(ヒトヘルペス6型)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 HHV-6(ヒトヘルペス6型)
 HHV-6(ヒトヘルペス6型)は,β-ヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人で1 歳半までに初感染を生じ突発性発疹の原因となります。マクロファージと脳内において潜伏感染を生じ、小児期での再活性化は熱性痙攣の原因となります。実は、HHV-6 には世界中に広く分布し、突発性発疹の原因となるHHV-6 variant B(HHV-6B)と、最初のHHV-6 として分離されましたが、疾患との関わりが未だ確定しておらず、感染者の数もHHV-6B より少数であるHHV-6 variant A がありますが、通常、特に断らない限りHHV-6 はHHV-6B のことを指します。

 近藤氏らの研究で、HHV-6は過度の就労で容易に再活性化して唾液中のウイルス量が増加し、休息により速やかにウイルス量が減少することからHHV-6 は現代人が抱える仕事のストレスによる疲労刺激で簡単に再活性化する性質を明らかにしました。HHV-6 の生存の戦略という観点からは、HHV-6 が仕事のストレスが中期的・長期的に続いて疲労している宿主の生存の危険を察知し、再活性化によって増殖し、他の宿主に移ることによって、自身の生存の確率を高くしているのだと推論しました。ヘルペスウイルスが、何らかのストレスによって生存の危機に立たされた宿主から再活性化という形で逃げ出す様は、船が沈む際に危険を察知していち早く逃げ出すネズミの様子を連想させる、と述べています。

 このようにしばしば体内でHHV-6が増加して問題はないのでしょうか?

 骨髄移植患者の70 %においてHHV-6 の再活性化が起こるといわれていますが、特別な症状はないようです。一部の人に、骨髄抑制、移植片対宿主病(graft-versus-host disease: GVHD)、脳炎、胃腸炎などが起こると報告されており、骨髄移植後の重要な病原体の一つとして注意されつつあります。ほかの実質臓器移植後のHHV-6 の再活性化も報告されており、30 %の腎臓移植後患者おいてHHV-6 の再活性化がおこり、その一部が 移植拒絶への関与も疑われています。またHHV-6 は最初AIDS 患者から分離されたウイルスであり、AIDS との関連はこれまで常に注目されてきています。HHV-6 の感染によってHIV のLTR プロモーターが活性化し,HIV 感染増殖が促進すると同時に、HHV-6 の感染によってCD4 分子の転写が促進され、HIV がより感染しやすくなるという報告もあります。その他、AIDS 患者では、HHV-6 感染によって重篤な肺炎、網膜炎、中枢神経系の損傷を引き起こしたケースも報告されています。その他、HHV-6 と口腔癌、慢性疲労症候群、多発性硬化症、薬性過敏症などの疾患との関連性も認識されつつあります。HHV-6の再活性化ですぐ症状が出るわけではありませんが、時々人に悪さをすることがあります。

<出典:菊池中央病院>

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 ⇒ ウイルスの種類

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