Subject : イオンをプローブとする分析技術
カテゴリー : 産業・技術
イオンをプローブとする分析技術
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イオンビームを薄膜・固体表面に入射させると、固体内原子と相互作用してイオンの散乱や粒子(固体構成原子、核反応生成粒子)、電子および光子の放出をもたらす。これらのイオン、電子、光子のエネルギーや角度分布を検出することにより、元素の識別、同位体の識別、格子欠陥の識別、表面構造の識別などが可能になる。同時にこれらの存在する深さ方向の分布も決定できる。
具体的には、ラザフォード後方散乱法、弾性反跳粒子検出法、粒子線励起X線法、核反応解析法、二次イオン質量分析法、二次中性粒子質量分析法、イオン弾性散乱法(低速イオン散乱法)、中エネルギーイオン散乱法などである。
- ● RBS(Rutherford Back-scattering Spectrometry)
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ラザフォード後方散乱法(後方散乱イオン)
元素の深さ方向分布及び組成比薄膜の密度または膜厚、結晶性評価
半定量(標準試料があることが望ましい)深さ方向分解能〜10nm、分析領域〜1nmφ
重元素ほど感度が高い(一般的には数百ppm)
数nm口以上
非破壊といっても照射によるダメージを受ける。特に結晶性評価をする場合は照射量の限度を把握する必要がある。
- ● ERDA(Elastic Recol Detection Analysis)
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弾性反跳粒子検出法
反跳粒子の深さ方向分布及び組成比
特にHの分布が可能 深さ方向分解能(〜50〜100nm)
分析領域〜1nmφ
数nm口以上
非破壊といっても照射によるダメージを受ける。特に結晶性評価をする場合は照射量の限度を把握する必要がある。
- ● PIXE(Particle Induced X-ray Emission)
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粒子線励起X線法、内殻電離を利用
元素分析(ppmオーダー)不純物原子の格子間位置の決定
数nm口以上
非破壊といっても照射によるダメージを受ける。特に結晶性評価をする場合は照射量の限度を把握する必要がある。
EPMAよりバックグランドが低い。
大気中での測定も可能。
- ● NRA (Nuclear Reaction Analysis)
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核反応解析法、α,β,γ線、中性子、三重水素を検出
元素の深さ方向分布及び組成比〜1010 atoms/cm3 程度の高感度分析ができる元素もある。深さ方向分解能〜10nm、分析領域〜1nmφ
数nm口以上
核反応により放射化される元素のみ検出できる
放射性元素の取扱に注意が必要
- ● SIMS (Secondary Ion Mass Spectrometry)
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二次イオン質量分析法、イオンスパッタリング
微量(ppm〜ppb)不純物の深さ方向分布
全元素(含同位体)の分析ができる
定量分析可能(標準試料が必要)面分解能(≧1μm程度)
深さ方向分解能(数nm程度)
20mm口以下(3mm口以上)厚み3mm以下
脱ガスが少ないこと
通常絶縁物では帯電を避けるために電子銃を用いたり金属をコーティングする必要あり
- ● SNMS(Sputtered Neutral Mass Spectrometry )
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二次中性粒子質量分析法、イオンスパッタリング及び中性粒子のポストイオン化
微量(ppm〜ppb)不純物の深さ方向分布
全元素(含同位体)の分析ができる
SIMSより定量精度が良い 面分解能(≧数μm程度)深さ方向分解能(数nm程度)
20mm口以下(3mm口以上)厚み3mm以下
脱ガスが少ないこと
通常絶縁物では帯電を避けるために電子銃を用いたり金属をコーティングする必要あり。
ポストイオン化の方法には、レーザ、電子衝撃プラズマを用いる方法などがある。
- ● ISS(Ion Scattering Spectroscopy )
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イオン弾性散乱法(低速イオン散乱法)、後方散乱イオンを分析
最表面層近傍の表面組成・構造(表面緩和、再配列、吸着、欠陥)に関する情報
20mm口以下(3mm口以上)厚み3mm以下
脱ガスが少ないこと
局所分析:〜100μm程度
絶縁物は電子線照射必要
CAICISS(同軸型直衝突イオン散乱分光)は表面の元素分析、定量的構造解析が可能
- ● MEIS(MEdium Energy Ion Scattering Spectroscopy)
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中エネルギーイオン散乱法、後方散乱イオンを分析
最表面層近傍の表面組成・構造(表面緩和、再配列、吸着、欠陥)に関する情報ISSより定量性に優れる
深さ方向分解能(0.4nm程度が得られる場合もある)
20mm口以下(3mm口以上)厚み3mm以下
脱ガスが少ないこと
局所分析:〜100μm程度
絶縁物は電子線照射必要
CAICISS(同軸型直衝突イオン散乱分光)は表面の元素分析、定量的構造解析が可能
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